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まるで命ある蛇のようにうねる髪が、炎の熱さに悶え苦しんでいるようにすら見えた。
「で、ですが、エクレーネ様……フィオナ様の命を奪うなど、そのようなことは……!」
「私の命令が聞けないというの?!」
バシンッ! と、空気同士が叩き合うような衝撃音と同時に、炎は異常なほどの業火となって部屋を覆った。
その怪奇現象に、ロバートは初めてある噂に思い当たった。
若く美しい後妻、エクレーネ妃は、本当は数百年を生きた魔女の一族であるという――そんな眉唾物の噂に。
「お、仰せの……ままに……」
地獄のごとき業火の中心に佇む主の命に、ロバートは本能的な恐怖に促され、頷いた。
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