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「うーん……うーん……」
頭が痛い。
脳天で小人が道路工事をしているような痛みに、フィオナは唸りながら意識を取り戻した。
「大分うなされてるねェ。カワイソーに」
「……人ごとのように言うな、ユーリ」
「おいおい誰だぁ? こんないたずら考えたのは」
「はいはーい、こいつでーす」
「ちょっ! カミュ、てめ、人のせいにしてんじゃねぇぞ! おまえだってノってたじゃねーか!」
「うるさいぞ! リッド、カミュ! 怪我人に触る、少しは静かに出来ないのか!」
「君の声が一番うるさいんだけどね……ヴァン」
なにやら騒がしい。複数人の声がごちゃごちゃと混じっていて、何を言っているか分からなかった。
「あ、目を覚ましたぞ!」
ぱち、と目があいた瞬間。誰かが発した言葉に、一斉に視線がこちらに集中するのが分かった。
天井が見えた。かすむ視界に、一度目を閉じ、もう一度ゆっくりと瞼を押し上げた。
「……へっ?」
今度は視界一杯に、7つの顔が覗いていた。
「あ、驚いちゃった?」
「そりゃそうだろ」
「やれやれ……誰がこの状況を説明するんだろうねェ?」
「てか、こっちが説明してほしいっつーの!」
7つの口がやんややんやとしゃべり出す。呆然としていたフィオナは、しばらくしてようやく、自分の置かれた状況を理解した。
不思議な森の家に入ろうとして気絶したフィオナは、この見知らぬ人たちに介抱されていたらしい。
寝かされていた場所は、はじめ寝台かと思ったが、実際は大きなソファだった。
フィオナは慌てて身を起こし、かけられていたブランケットを胸元まで引き寄せた。
背もたれに埋もれる勢いで身を寄せ、見知らぬ男達と距離を取る。
全身が緊張で強ばっていた。
「…………」
言葉が出てこず、何度か唇を開閉させる。忙しなく視線だけを巡らし、周囲を観察すると、そこはログハウスの中だった。
ここはリビングだろうか。フィオナが座る大きな長ソファの前には、背の低い大卓が置かれている。卓を挟んで向かいに、一人掛けのソファが二つ並んでいた。
木造の壁と床。天井は高く、2階まで吹き抜けになっている。大きなソファを取り囲んでいる顔は、全部で7つだ。皆、似たような年代に見えた。
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