ルーキー・ギャングスターズ

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――いつもここで目が覚める。 この男がたまに見る夢だ。 この男の人生を変えた日、人生で最も最低だった日を、脳が「忘れるな」と言っているかのようだ。 あの時、本当は偶然通りがかった中年の医者の男に助けられた。 しばらく厄介にもなった。 まるで家族の一員として迎えられたかのように、待遇は温かかった。 生を一瞬諦めた癖に、不思議と感謝の気持ちは忘れていない。 彼の命の恩人なのだ。 汗でびっしょりとなった体をベッドから起こす。 両手を床につき、逆立ちになる。 四股の筋肉が目を覚ます。吹き飛んだはずの手足はこの通り健在だ。 腕立て伏せを始めた。 懸命に肉体を酷使する。 こんな日は日課のトレーニングにも力が入る。 あの苦しい夢を忘れるために、泥のような嫌な汗を、新鮮な汗で流すために。
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