そして僕は犯罪者になった

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大急ぎでリビングを駆けると、テレビのリモコンを踏んづけてしまった。 パチッという音の瞬間、テレビが明るく変わった。どうやら夕方のニュースの時間らしい。見覚えのあるアナウンサーが、重みを帯びた顔でニュースを読んでいる。 しかし今は耳を貸す暇すら、小島 裕太にはなかった。夜の7時から、高校の同窓会があるのだ。 本当に久しぶりに会う。 もう十年か…永いようで、どこかあっという間だった気がする。 ふいに笑みがこぼれた。急いでいた手足も、気づけば普通の速度に戻っていた。 「いけないいけない、早くしなきゃな」 クローゼットの最前列に吊されたお気に入りのコートを羽織った。その時、裕太の自然にこぼれた笑みは、一瞬にして凍りついた。 『商店街裏で起きた皆川寛さん殺人事件の犯人は、株式会社木下電通の社員、花巻薫、28才と確定する確かな証拠が警察から発表されました。花巻薫は未だ逃走中とのことです』 花巻 薫、聞き慣れた名前だった。 テレビに映る花巻の顔は、裕太の初恋の相手とまったく同じだった。  
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