そして僕は犯罪者になった

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「うっ」 僕を睨みつける花巻の鋭い瞳と目があってしまった。 すぐに目をそらしたが、きっと彼女は今もまだ、僕のことを睨み続けていることだろう。 「どうしたんだ小島?お前今日変だぞ…?」 どうやら前野は、花巻が殺人犯であることを知らないようだった。いや、前野だけではない。ここにいる他の人物達も、なにも知らない。 裕太には、彼らの何気ない笑顔がうらやましかった。 「ちょっと、トイレに…行ってくるよ」 「ああ‥顔でも洗ってすっきりしてこいよ」 裕太の気を正すように、前野は肩を叩いた。 そのまま花巻の方は振り返らずに、まっすぐトイレに向かった。 その途中に、ふとこう思った。 何も知らないのは、世界で最も平和だと、その時本当に思った。 しかし裕太は、何も知らないのもまた、世界で最も恐ろしいと、これから実感することとなるのだ。
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