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一呼吸置いて返事をした大角の脳裏に、条件反射のように悪い予感がよぎる。
「先日はだいぶ、旦那に迷惑を掛けちゃったね」
みるみる曇り始める大角の表情を、受話器の向こうの原筒美が気づくはずもなく、ノー天気な調子で話を続ける。
「世話になりついでに、もう一度だけ頼まれちゃくれねえか」
「どういったご用件でしょうか……」
一拍置いて大角が尋ねる。
「じつは昨日、青葉さんから電話があってな」
「ああ、青葉さんから!」
青葉の名を聞いたとたん、大角が思い出したように大声を上げた。青葉繁は、黄金婆の祟りによって癌に侵された人物である。
「容態の方は、どうですって?」
期待と不安の入り混じった声で大角が尋ねる。青葉の症状が快方に向かえば、黄金婆を除霊できた証明となるのだ。
「おかげですっかり元気になったとよ。病院で検査したら、癌細胞がきれいに消滅していたそうだ」
「そいつはよかったですねえ!」
原筒美の半信半疑の口調に対し、大角は素直に喜びの声を上げた。
「それでな、お盆に放送される『あの世で愛魔ショー・スペシャル』で、テレビ界に復帰するらしいんだ」
「なるほど」
「じつはその件で、彼に頼みごとをされちまったんだ」
「まさか黄金婆のエピソードを、番組で使わせてくれというのじゃないでしょうね」
警戒したように声を硬くする大角に、原筒美が慌てて否定した。
「確かにそういう話も出たが、さすがにそれは断ったよ。まりやちゃんたちまで晒し者にできないからな」
「当然です、自分の祖母が怨霊になっていたと知ったら、彼女のショックは計り知れないでしょう」
「だからその件は断ったんだが、代わりにメインを張れる大物霊能者を紹介してくれというんだ」
「……出口王仁三郎とか?」
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