0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「君のお名前は?」
「私は『さゆり』です」
毎日何度もされる会話。
夫は認知症が進み私のことを長い時間覚えていない。
尽くしても尽くしても、私を忘れる…。
最初は忘れられることが悲しくて腹がたち、何度も何度も怒鳴った。
でも、今では…。
結婚後"ありがとう"と言う言葉を言わなくなっていった。
子供が産まれ、私の名前を呼ばなくなっていった夫。
でも今は私を名前で呼び、"ありがとう"とはにかみながら笑顔で言ってくれる。
その時、私は愛で包まれる。
気のせいと言われればそうかもしれない。
今が幸せかと聞かれれば、分からないと答えるだろう。
でも不幸かと聞かれたら、私は「不幸ではない」と言える生活を送っている自信がある。
最初のコメントを投稿しよう!