2012年4月18日

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ディレクターである会社顧問から電話がかかって来た。 「あのさー。舞台の企画を一緒に考えてくんない? 時代劇」 「どなたのですか?」 「男優は◯◯さん。女優は◇◇さん」 「ああ、はい」 「先方のエージェントは『芝浜の革財布(落語)は? 』とは言ってるんだけどさ」 「はぁ……でも『芝浜』は、腕がある役者が演るからこそ面白いので……」 「そうなんだよな……あのコンビじゃあなぁ」 「『桃太郎』とか、『コブ取りじいさん』とかの、日本昔話系は如何でしょう?」 「――いや、まぁそう投げないで考えてよ(笑)」 私はエブリの新作の題名を考えなきゃならないので――とは、もちろん言えず。 「わかりました。なるべく早く考えます。原作有りがいいんですね?」 「その方がエージェントがイメージしやすいからね」 うーん。◯◯さんと◇◇さんねぇ。体型もまさに◯◯だしなぁ。 時代劇でねぇ。体が◯◯だと、出来る役が狭まれちゃうしねぇ。 早速煮詰まる。 そう言えば、だいぶ前になるが―― 仕事を振ってる売れない俳優から、 「小さい劇場ですが、主役を勝ち取ったので是非ぜひ見に来て下さい!」 と、無理矢理チケットを買わされて指定の劇場に行った。 「三年寝太郎ー不条理バージョン」 彼は、ずっとふんどし一丁で舞台を走り回っていたっけ…… 私は3500円も出して、なんでこいつの全裸に近い姿を見てなきゃいけないんだ? 物凄く腹立たしく、哀しくなった、あの日を思い出した。 その思い出と被った。
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