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ディレクターである会社顧問から電話がかかって来た。
「あのさー。舞台の企画を一緒に考えてくんない? 時代劇」
「どなたのですか?」
「男優は◯◯さん。女優は◇◇さん」
「ああ、はい」
「先方のエージェントは『芝浜の革財布(落語)は? 』とは言ってるんだけどさ」
「はぁ……でも『芝浜』は、腕がある役者が演るからこそ面白いので……」
「そうなんだよな……あのコンビじゃあなぁ」
「『桃太郎』とか、『コブ取りじいさん』とかの、日本昔話系は如何でしょう?」
「――いや、まぁそう投げないで考えてよ(笑)」
私はエブリの新作の題名を考えなきゃならないので――とは、もちろん言えず。
「わかりました。なるべく早く考えます。原作有りがいいんですね?」
「その方がエージェントがイメージしやすいからね」
うーん。◯◯さんと◇◇さんねぇ。体型もまさに◯◯だしなぁ。
時代劇でねぇ。体が◯◯だと、出来る役が狭まれちゃうしねぇ。
早速煮詰まる。
そう言えば、だいぶ前になるが――
仕事を振ってる売れない俳優から、
「小さい劇場ですが、主役を勝ち取ったので是非ぜひ見に来て下さい!」
と、無理矢理チケットを買わされて指定の劇場に行った。
「三年寝太郎ー不条理バージョン」
彼は、ずっとふんどし一丁で舞台を走り回っていたっけ……
私は3500円も出して、なんでこいつの全裸に近い姿を見てなきゃいけないんだ?
物凄く腹立たしく、哀しくなった、あの日を思い出した。
その思い出と被った。
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