prologue Ⅰ 始~ハジマリ~

10/20
前へ
/65ページ
次へ
2人とも防具に身を包み、相対する。 「では始めようか。一本勝負で良いな?」 「はい」 バシィィィン! 開始の合図は無かった。 暫く続いた静寂の後、お互いの竹刀がぶつかり、激しい音が道場内に響く。 前回は手も足も出なかった。でも今なら。 そう思っていたが、どれだけ攻めても軽くあしらわれる。 向こうからは仕掛けてこない。何故だ。 体勢を立て直すために間合いを開ける。 が、それが間違いだった。 俺が後ろに下がった瞬間、父が動いた。 一気に間合いを詰められる。 (まずいっ!!) 一瞬だった。そして一撃だった。 父が放ったのはたった一撃。だがその一撃は俺の面を的確にとらえた 負けた……。 (まだ届かないのか……) 悔しい。そう思うのも久しぶりだった。
/65ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加