prologue Ⅰ 始~ハジマリ~

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歩き出した恵斗の後に続く。 階段の途中で恵斗が話しかけてきた。 「先輩いっつもあそこにいますよね~。なんでなんスか?」 「特に理由なんか無いよ。落ち着く場所を探してたら、あそこに行き着いた。それだけだ」 「ふーん。俺にゃよくわかんねぇッス」 そこから道場に着くまで、お互い特に口を開く事はなかった。 暫くすると、道場の前に着いた。 「あっ。そういえば今日自主練でしたっけ。先輩どうしますか?」 思い出して、入り口の前で恵斗がこちらを向いて聞いてきた。 「何でもっと早く言わない」と言おうとしたが、飲み込んだ。 何故なら、俺も忘れていたからだ。 少し悩んだが、 「いや、今日はもう帰る」 事にした。 決して面倒だった訳ではない。ただ、今日はそんな気分では無かっただけだ 「そうッスか。じゃあ、また明日ッスね。お疲れ様です。」 そんな俺の気を知ってか知らずか、そう言うと恵斗は俺に一礼した。 俺は「おぅ」とだけ返してその場を後にした。 後ろで道場の入り口の開く音と、恵斗の「おっ疲れ様でーす!」と言う声が聞こえた。
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