prologue Ⅰ 始~ハジマリ~

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その日の食事の席での事。 「どうだ、最近の学校は。楽しいか?」    食事中滅多にしゃべらない父が珍しく口を開いた。 しかも、俺の学校生活の事を聞いてくるのは相当稀だ。 最後に同じ質問をされたのは……小学5年生の頃だったろうか…。 「珍しいわね。あなたが学校の事を聞くなんて」 母も同じことを思っていたようだ。 「なに。たまにはな」 この人の「たまに」は一体何年分を指す言葉なのだろうか……。 「学校ですか。楽しいですよ、いつも通りの充実した学生生活です」 嘘をついた。 本当はちっとも充実などしていない。 退屈なだけだ。 でも、とてもじゃないが、両親の前でそんなことは言えなかった。 「そぅ。楽しそうでなによりだわ。ねぇ、お父さん」 「うむ」 「何か困った事があったらすぐに言ってね?いつでも相談にのるわ」 「ありがとう母さん」 以上。本日の食事中の会話終了。 これでも長く続いた方だ。 酷い時には一言もしゃべらない時もある。 が、決して家族仲が悪いわけではない。 単純に、ここにいる人間全員が食事中にしゃべらない質なだけだ。
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