プロローグ

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布団の中で耳を塞いだ。 寒い訳ではない。夏だし、普通なら布団を剥ぐくらいなのだが、僕は違った。 うるさくて、怖いのだ。 一階から聞こえる怒鳴り声、それは雷に似て、嵐のように荒れている。 お父さんがリストラされた。 エリートだったお父さんが突然つき付けられた現実で、次第におかしくなり、荒れて、酒とギャンブルに溺れはじめたとお母さんは泣きながら言っていた。前に離婚を告げたのだが、慰謝料をだしてくれなきゃ別れない、と言われたらしい。お父さんのせいで僕の家はお金があまりないので離婚ができなく、苦しみから逃げられないお母さんはおかしくなってしまった。 まるで別人のような人格で僕を叩く でも、それはお母さんがストレスをためないようにしている最善策であって、僕はそれを黙ってうける。これでお母さんが楽になるのなら。それに叩き終わった後に、ごめんね、痛かったでしょって優しくなでてくれる。僕は愛されていない訳ではない。 でもこんな生活はもう嫌だ。 だから夜はずっと部屋に籠る。 気になるのは妹の事 まだオムツがとれたばかりで、幼い。そんな妹はあの嵐が吹き荒れる場所にいる。本当は僕の部屋に連れてきたかったのだが、勇気がなかった。僕はそんな奴だ。
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