夏休み

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 暑苦しい教室で先生の話を聞きながら、自分自身を下敷きで仰いだ。こんなものでこの暑さ凌ぎになる訳ではないのだが、仰がないよりはいい、少しは涼しくなる。 しかし、仰ぐスピードを速めると勢いよく下敷きがベキッと音を立てて折れた。そんなものだから先生と目が合って怒られ、周りからもドッと笑いが起きて僕は注目の的となってしまった。先生はあきれながら水原翔太郎、と僕の名前を呼び通信簿を渡す。評価は良かった。ただ、先生からの欄に『しっかりしているのですが、子供らしさが多少足りないようです』と書かれていた。まぁ、しょうがない。家であんな事が起きているのに子供らしく元気にのびのびはしていられないだろう。 けれど今日からの僕は少し変わるはずなんだ。 そう、あの懐かしい異郷の地へ足を運ぶ。 先生が『よい夏休みを!』と言い終わると、それまで静かにしていた教室が一気に騒がしくなる。あちこちに人が集まって、夏休みの話をしはじめた。 頭の中でシュミレーションした。僕の一人旅をどうかっこよく友達に伝えるかなって。家族と沖縄旅行だディズニーランドだと言っている友達の中を割って「俺…一人旅する」 なんて言って見る、一人称が違うけど気にしない。それとも、さりげなく教室を出ていく所を友達が呼び止め、お前はどこいくんだよ!と聞かれた瞬間 「…一人旅」 とかっこよく言う。僕が去っていったその後ろでは、友達の歓声が沸く。 うん、これで行こう。 ところが僕がそれを実行するため、さりげなく教室をでていこうとしたんだけど「じゃなあ!」て声をかけられただけで終わった。あれ、僕の計画めちゃめちゃかな、すごく悲しくなって来たんだけど。去っていく僕を背に歓声が沸いたが僕のためじゃない、輪の中の一人が「ヨーロッパ旅行」といったからだ。 まぁ、良い本来のかっこよさは何も言わずに成し遂げる事だから。 っと…目的がズレた。こんな事気にしている場合ではない、早く帰らなくては。
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