Secret space

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晃佑の電話番号は着信拒否にして、メールも迷惑メールに登録して。 胸の中にある苦しくて痛いものを溜め息で吐き出す。 大きく息を吸うと溜め息までもが大きくなる。 深呼吸をしたいのに、吐き出す息は溜め息。 お風呂に入ってあがって、ショートまで切ったのに、肩ほどに伸びた髪を乾かして。 また頭を軽くするために髪を切ってしまおうかなと思う。 もう禿げてもいないし。 …一ヶ所、傷があって、そこは禿げてるけど。 小さいから目立たないけど、誰かに見つかると恥ずかしいかもしれない。 私の頭にふれた晃佑の指を思い出して、私はぼんやりとその記憶を眺める。 不意に着信があって、携帯を手にしてみると表示されていたのは加藤くんの名前だった。 …何を言われるか予想がつきそうだ。 怒るのかどうかはわからない。 そのわからないものが気になって出てみた。 ミクのことも聞いてみたいし。 「はい。トモちゃんです」 そう出ると、電話の向こうは吹き出して笑った。 私は携帯を耳から離して眺めて、もう切ってもいいかなと思う。 『トモちゃん?』 呼ばれて私は携帯を耳に当てる。 「事後報告が必要?晃佑の保護者さん」 『いいや。前に聞きそびれた心境は聞いてみたいものだけど。どうせ話題を逸らすだろ?』 「なら、どうして電話をしてきたの?」 『ほら話題逸らした。千香は友達なんだろ?相談くらいすればよかったと思うけど?』 「千香と連絡とってるんだ?復縁?」 『……トモちゃん?会おうか』 怒りやがった。 面倒だ。 「襲われたくないので会いたくないです。切ります」 『なぜだろうね?トモちゃんと話せば話すほど、その顎を掴んで揺らして吐かせたくなるのは』 暴力的なっ。 …私が生意気な態度をとってみせるからなのはわかっている。 晃佑に影響されたものがあると思う。 「こわいので絶対に会いたくありません」 『俺は会いたいな。電話だと逃げ道多すぎて聞けないから』 「晃佑に聞いてください」 『言ってるだろ?俺が聞きたいのはトモちゃんの心境。コウが知っていたらエスパーだな』 「別にもういいでしょ?加藤くんには関係ない」 『今から家に押しかけていい?』 「切ります」 私は通話を切って。 すぐに加藤くんはかけなおしてきた。 お節介。 世話焼きな人だ。
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