Secret space

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私は渋々と電話に出て、加藤くんの奢りで夜の甘いものツアーに出ることになった。 …餌に釣られた。 加藤くんと待ち合わせをして、繁華街にある喫茶店にでもいくのかと思えば、車を出してきて。 その助手席に乗せられてたどり着いたのは、祭りの屋台が並ぶ場所だった。 「もう屋台閉まる時間だし、食べたいものさっさと買い込んで話そう?」 車の鍵をかけながら加藤くんは言って歩き出して。 私は慌ててついていく。 地元の神社のお祭りって感じだ。 花火の音に空を見上げると大きな花火が見えた。 耳には花火の打ち上げる音と祭り囃子。 花火を見上げて立ち止まっていると、加藤くんは戻ってきて、私の背中を押して歩く。 「はぐれないように手繋ぐ?はぐれたらおいて帰るよ?」 ここがどこかもわかっていないのに、けっこうな鬼だと思う。 加藤くんに手をひかれながら花火を見上げて人混みを歩く。 大きな音が弾けるたびに、胸の中のものが少しだけすっきりする。 けど、主役は祭りのようで打ち上げられる花火は少ない。 花火大会にいきたくなってきた。 「綿飴、林檎飴。チョコバナナにベビーカステラ。かき氷に冷やしパイン。甘いものってこんなところか。なに食べる?」 「全部」 「……太るの気にしてなかったっけ?」 「裸を見られる相手もいないから大丈夫」 「…奢りだと思って…。ちょっとは遠慮しようよ?」 「たこ焼きとポテトも追加。あ。くじと射的もやりたいっ」 「……なんなんですか?おい。コウが乗り移ってるのか?」 なんて言うくせに、加藤くんは財布から1枚取り出すとそれを私に持たせた。 太っ腹。 屋台を満喫しまくって、花火も終わって。 人がぞろぞろ帰る中、加藤くんと段差のある座れるところに座って買い込んだものを食べる。 何気に夏祭りデートをしてしまっている気がする。 これは私から何かを聞き出すというよりも慰められているのだろう。 晃佑が加藤くんに妬く気持ちがわからなくもない。 顔も背もそれなりで、軽い口調のくせに軽くはない。 考えなしの馬鹿でもない。 どちらかというと策略家。 「腹こわしそ。トモちゃん、無理に食べるなよ?」 「金魚掬いもやっぱりやればよかった…」 「…会話噛み合わそうよ。たまには」 「わざと」 「そういうのは噛み合わせるんだよな。…顎掴んでいい?」 「遠慮します」 即答却下をさせていただいた。
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