Secret space

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屋台で買ったものも一通り食べてお腹も膨れて。 少し残してしまったものは持ち帰る気満々である。 晃佑も貢いでくれる人だったなぁと思う。 思ってから、また思い出している自分に気がついて溜め息をこぼす。 忘れることなんてできるはずがない。 思い出の物は捨てても、思い出が消えるわけじゃない。 「…ミクとのこと疑い続けていた?」 加藤くんは黙っていたかと思うと、不意に聞いてくれる。 「疑ってないよ。晃佑は私だけ見ていてくれた」 「冷めて別れた感じがしないんだけど。なんの問題があった?」 「自己完結の妄想の暴走」 晃佑は口に出しては言ってもいないのだから、そういうことになる。 すべて私が一人で思って考えて悩んだ結果だ。 晃佑は悪くはない。 誠実な人だと思う。 「……聞いても出てくる答えは見透せた?…待っていてやればいいのに」 その口ぶりは私が何を妄想したのかわかっているかのようで。 「晃佑はミクが好きなままでしょ?」 私はそう聞いた。 「俺はあいつじゃないからわからない。ただ…、やけに固執していたから、そうなのかなぁとは思った。それでも、憧れの君であるトモちゃんとつきあえて…」 「私に晃佑が憧れてるはずない」 「確定はコウの口からしか出ない。……俺にはコウにとって憧れの君にしか思えないけど。ま、つきあえて、別れてどん底に落ちて、更に憧れの君は自分のつきあいの人間に傷つけられて…」 「……なんで知ってるの?」 私は誰にも言っていない。 警察にしか言っていない。 千香にも言っていない。 「コウが千香に話した。友達紹介のとき。その後、千香が俺に話した」 恨むのは晃佑か千香か。 どちらもか。 誰にも知られたくないことなのに。 「ちゃんとつきあっていたから5ヶ月だったと思うけど?ミクはどこに出てくる?トモちゃんとつきあう1週間前…、正確には去年の今頃つきあっていたと思うから、つきあう3ヶ月前には別れている。トモちゃんの妄想がそこに暴走した理由が見えない」 「加藤くんがミクに晃佑が連絡とったと教えたせいにしておく」 本当は…そんなものじゃないけど。 ずっとつけていたピアスと、投げ捨てるその手と。 晃佑の涙。 泣いたことなんて言ってやらない。 晃佑の記憶にもないのだから。 私しか知らない。
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