Secret space

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無意識の意識が一番素直な感情なんじゃないかと思う。 私の顔も見ていられないほどに泣き崩れて、声を押し殺して泣いたその姿を思い出して。 無意識に泣いている私の涙もまた素直な感情なのだろう。 私に向けてくれた笑顔を思い出して、抱きしめてくれるその腕を思い出して。 その姿ばかりを思い出して。 止められない涙に私は顔を膝に埋める。 大好き。 ただ、大好き。 あなたが笑ってくれるのなら、私が泣いてもかまわない。 その笑顔が大好き。 私はひたすら泣き続けた。 加藤くんは私の隣に座って、頭を撫でてくれていた。 晃佑の手とは違う手。 慰められているのに、余計に寂しかった。 落ち着いた私の手に加藤くんは買ってきたオレンジジュースを持たせて、隣で煙草を吸う。 私はオレンジジュースを眺めて、蓋を開けると煽るように飲む。 一気に半分くらいまで飲むと、また目に涙が浮いてきた。 今の私の体は水分をとると、すべて目から出るようになっているらしい。 「明日、朝から学校」 「私も。今何時?」 「午前3時過ぎ。車で寝る?ラブホいく?…あ、金ないや。屋台で残金3千円って豪遊しまくりだろ」 連れ込むつもりなんて最初からないくせに。 「……7千円分、体で返す?」 言い返すように言うと、加藤くんはその視線を私に向けて、私は加藤くんを見る。 手にしていた煙草を口にくわえて、その片手を私の頬にふれさせて。 じっとその顔を見ていると、その唇は私の唇に近づいてきて。 「……トモちゃんに手を出したら、コウに殺されそ」 なんて言って、私の唇にくわえていた煙草を挟む。 私は煙草を指で挟んで吸ってみる。 すぐに煙を吐き出して吸ったふりとも言える。 もう一回煙を口の中に入れて、溜め息をつくように吐き出した。 「ミクには手を出したくせに。ねぇ?ミクって…そんなにかわいいの?」 「…煙草とられた。会いたいなら会わせてあげるよ?ミクはコウの彼女に会いたがっていたから。宣戦布告のために」 「気が強そう」 「強いよ。コウ以上に自己中。いや、自己中というより、あれは目の前のものしか見ていない。1つを見れば1つだけ。俺を追っていたくせに、コウに戻りたいって言って相談してくるんだから笑える話」 何か晃佑にも同じようなことを聞いた気がする。
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