Secret space

7/15
前へ
/606ページ
次へ
「ミクが非の打ち所のない女なら何も言わないわけでもないけど。ミクの在り方はただの遊びだ。寂しいときに寂しい気持ちを紛らわせるための相手が欲しいだけ。コウもそんなものだったから、ミクとつきあっていればいいだろと俺はミクを受け入れなかった。 寂しい気持ちを紛らわせるためだけに相手が欲しいのはまちがっていないと思う。 本気で惚れる気持ちで一緒にいてくれる相手と、すぐに移り変わる変わり身の早い相手が同時にいたのなら、俺は本気のほうを選ぶ」 「……もしも変わり身の早いほうに惚れてしまっていたら?」 「振り回されたくもないし、忘れさせてくれと本気のほうに甘える」 加藤くんが言うと、晃佑が言っているように聞こえて、私は片手に煙草、片手にジュースで、また膝に顔を埋める。 「本気の気持ちが重いとでも思えば、それは自分が遊びたいだけ。その気持ちを受け止められなければ、遊びを繰り返せばいい。 コウはコウなりに真剣にトモちゃんに向き合っていたよ。ミクに残した気持ちがあったとしても、フラれ続けて軽く見られ続けてきたあいつは違う恋愛がしたかったはずだ。その相手は自分を軽く見ない、本気で惚れてくれる相手じゃなければいけない。恋愛は一人ではできないから」 「……怒られてる?……背中を押されてる?」 「俺は関係ないから。怒ってもいないし、背中を押してもいない。……言うなら、自己完結の妄想の暴走をする前に、千香にでも話せばよかっただろと。千香の言うことと、俺の言うことは、たぶん似ているから」 片方だけの意見に同意するのは好きじゃない。 千香がそう言ったその声を思い出した。 本当、似ているかも。 「トモちゃんはこのままでいいと思う?コウがミクと戻ったとしても、俺にはそこに楽しいものはないと思うんだけど。せっかく恋愛するなら楽しめるものじゃないと」 「……お節介。何が言いたいの?」 「邪魔してみたくならない?」 悪魔だ。 加藤くんには私を見透かされている気がする。 邪魔を…したいとは思わないけど。 ミクがそんな人なら、もっと晃佑を見てよって言いたくなる。 私はそんなことで晃佑を苦しませるために別れたわけじゃない。 燃え尽きそうになっていた煙草をその場に落とした。 愛して…あげて欲しい。 晃佑を。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加