Secret space

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相思相愛というものだと思っていたのは私だけなのか? ミクという人を私は深く知らないし、顔も見たことがない。 晃佑が笑ってくれるように、私ができることを考える。 考えても答えは出ない。 ただ、晃佑の気持ちを振り回さないであげてと、なんだかお節介な言葉しか浮かばない。 「もう一本吸う?」 加藤くんは煙草をまた口にくわえて、私にその箱を向ける。 「ニコチン中毒にされそう」 「強制してないって」 加藤くんは煙草に火をつけて、ふぅっと白い煙を吐く。 「…麻酔薬でトリップしたくなってきた。考えても考えても何を考えていいのかわからない」 「トモちゃんはコウと別れて何がしたかった?」 「……晃佑に幸せになってもらいたかった」 私はそれを吐き出して。 ミクに振り回される晃佑なんて見たくないと思う。 それでも晃佑の気持ちはそこにあるし…。 「まぁ、ミクに振り回されているのがあいつの幸せになるかもしれないしな」 なんだろう?この意地悪な人は。 それは嫌だと思うのに。 晃佑をミクの恋愛ごっこにつきあわせたくはないっ。 晃佑はそんなの嫌がっていたっ。 晃佑の寂しさを増やしてどうするっ? 「ミクに振り回されるくらいなら私が振り回すっ」 それを口にすると、加藤くんはそれが聞きたかったとでも言いたげに笑みを見せて。 私は私が口にした言葉に唇に手を当てる。 「無意味に泣き暮らすくらいなら、それくらいの根性でかかっていってもらいたいもの。 コウ、呼び出そうか?あいつ、睡眠障害入ってるから起きてるだろ」 「…また長時間眠れなくなっているの?」 「手のかかる子供なら、寝るときはぐっすり眠ってもらいたいところだけどな。なんにも考えていないように見えても、メンタル弱いんだよ。だから誰でもいいから寄り添いたがって、傷つけて傷ついてを繰り返す。 …憧れの君が寄り添ってくれていたのに、尻軽女に心を持っていかれていて。その気持ちに決別しようとすると憧れの君は尻軽女との思い出の品を持ち帰ってくれる。 ……コウ、虐めるの好き?」 好きかもしれないけど、そこに虐めの気持ちなんてない…。 責められてる? やっぱり怒られてる? 「尻軽女ってひどい言葉だと思う」 「話を逸らす…。俺にとっては軽いから仕方ない。誰にでも好き好き言い過ぎ。俺はミクの好きって言葉が信じられない。……カタイのを塩揉みするのが好きなのかも」
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