Story

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「…チカって…」 トモカです。 一生言わないでおこうと思う。 「高校の頃、メガネだったよな?コンタクト?」 「裸眼です。…授業中だけメガネ」 なんで覚えているんだろう? 話したこともないのに。 酔っ払いのときはわからなかったくせに。 「…メガネかけてる印象強いかも」 なんて言いながら、彼はまたじっくり私の顔を眺めてくれて、私は視線の行き場がない。 「話したこともありません」 「ないよな。だからあの日、目が覚めたらなんで杉浦サン…、チカがいたのかがすごく謎だった」 杉浦のほうが合ってます。 言わないけど。 「私も謎です」 どうして私がこの人に髪を引っ張られて絡まれて、家にお持ち帰りされたのか。 接点はない。 あれは…、絡まれただけだ。 だからこうして会うのもおかしいんだ。 彼が私に電話をしてくるのがおかしいんだ。 「じゃなくて。どういう状況でそうなった?」 「…髪を引っ張られて」 「…意味わからん」 私もわからない。 酔っ払った自分に聞いて欲しい。 「どこまでの合意の上でのセックス?」 それを聞かれると沈み込みそうになる。 彼についていったのは、結局は私で。 土壇場で逃げ出そうとしたから縛られただけで。 その時には私は裸になってた。 はっきりいってすべて合意だ。 合意をしてしまったのは…、私だ。 それで忘れられていたって…仕方ない。 私は彼が酔ってるってわかっていた。 その行為が遊び以外に何もないこともわかっていた。 誰でもいいってわかっていた。 「全部合意です。だからもう電話もしないでください」 「なんで?チカ、かわいいし。また遊ぼう?」 「私は遊べる女じゃありません」 「つきあう?」 彼はどこまで軽いんだろう。 「遠慮します」 「って、合意したのは少なからず俺に興味があったからだろ?なんでつきあうことを遠慮されるの?しかも即答。却下や断る言葉はいつも即答」 そうかもしれない。 彼に興味があったのは…事実だ。 今も興味はある。 あるけど、それ以上に私と彼の違いを目の前に見ている気がする。 「私は遊べる女じゃないって言ったじゃないですか」 「遊びの女は遊びの女。つきあった女は彼女」 遊びの彼女。 私はそう思う。
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