Secret space

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「私はキュウリではありません」 「そこまでスレンダーじゃないもんな。出るとこ出て、いい体」 私は思わず赤くなって、胸を隠すように腕でかばう。 晃佑好みの服を着てくるんじゃなかった。 「……1回だけしてみる?」 「冗談でも言わないでっ」 「かた…。冗談のつもりないけど」 「そうやって本当はミクも誘ったんじゃないのっ?」 「だからあれは誘われたんだってっ。…本気になる前にコウ呼び出そう」 加藤くんは携帯を手にして、本気で呼び出すつもりらしく私の目の前で電話をかけ始めてくれて。 私はなんだかすごく焦って、慌てて加藤くんの手を止めるようにその手を握った。 晃佑に会う心の準備なんてできてもいないっ。 そんな…本気で晃佑を私が振り回せる気がしない。 だって私は…。 私が…さよならって言った。 傷つけた。 「コール中。俺、トモちゃんに一度言ったと思うけど?つきあおっかって。俺にふれないほうが身のためだと思うよ?……キスするよ?」 「切って。待って、その電話っ」 私は加藤くんの手から携帯を奪おうと手を伸ばして。 加藤くんは避けてくれちゃう。 追いかけていたら私の背中に加藤くんの片腕がふれて、その腕の中に倒れ込まされた。 『夜中にうるせぇ。ボケ』 なんていう晃佑の声が加藤くんの手の中の携帯から聞こえた。 「…今、おまえの憧れの君を抱きしめてしまっているのだけど」 『……なんの報告だよっ?ぶっ殺す。今すぐ離せっ』 怒ってる。 しかも憧れの君で通じてる? 私はその声に耳を傾けるようにおとなしくしてしまう。 加藤くんの表情はにやついてくれて。 慌ててその腕から逃げようとしたら、片腕と片足で押さえ込まれた。 「ちょっと…っ。はな…」 思わず声をあげてしまって、私は慌てて口を塞ぐ。 『……隆太、おまえ、今どこ?』 「S町のコインパーキング横。……嫉妬しすぎだろ」 『俺の女に手を出すんじゃねぇって何回言えばわかるんだよっ?』 「もうフラれて別れた相手だろ?……ま、妬かせたくて電話したのは俺だけどな」 『……コンクリ漬けにして海に投げ捨ててやる』 本気で怒ってる。 こわいっ。 私は殴られそうな気がして、加藤くんの腕から逃れようと必死でもがく。 「暴れないの、トモちゃん。おとなしくしていれば何もしないって」 加藤くんは普通に声をかけてくる。 『って、嫌がられてんのかよ』 嫌がってるっ。
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