Secret space

10/15
前へ
/606ページ
次へ
加藤くんの手は私の頭にふれて、私の髪をかきあげながら、私の耳元にその唇を近づけてきて。 「…変に拘束するほうがべったりくっついてるって思わない?」 耳元近くに聞こえた低い声と、耳にかかる呼吸にぞくってしてしまった。 犯された以外で私はこんなふうに晃佑以外の人に抱きしめられたこともない。 おとなしくしてその腕から解放されるのを待ってみた。 「……今感じた?…耳弱い?」 加藤くんの唇が私の耳にふれて、その温かい舌が軽く舐めて。 耳元に聞こえた音に私は体を震えさせて息を飲み込んだ。 弱いみたいだ。 恥ずかしくて真っ赤になって、加藤くんの腕を叩く。 晃佑と電話しながら変なことをしないでと言いたい。 私が疑われる。 「…俺の股間のほうがやばいかも?」 『ちょっと待て。おまえ、今の間に何をした?』 「……なんもしてない。気のせいだ」 『今度こそ本気で奪うつもりだろ?機会狙ってないか?……俺が取り戻すんじゃ、ボケっ!』 晃佑のそんな大きな声が電話の向こうから聞こえた。 取り戻す…? 「狙ってないっ。そこに踏み込まないように距離を置いていたつもりだっ。今のはイタズラがすぎただけっ。……かわいいんだけど。この反応。1回だけ貸してくれる気ない?」 加藤くんが変なことを言ってくれるから、私は必死にその腕を叩く。 腰を抱き寄せられて、恥ずかしくて泣きそうになって。 私はその腕に噛みついた。 「いてっ」 『知花を犯したら本気でやるぞ?……もうすぐ着く』 「もうちょい待つ気ない?犯さないように落とすから」 『俺を呼び寄せているのはおまえだろっ!』 なんていう晃佑の声が響いて。 少しすると晃佑のバイクが私と加藤くんの前に滑り込むようにして止まった。 晃佑はメットを脱いで、携帯に繋いでいたイヤホンマイクを取ると、エンジンはかけたままバイクのスタンドを立てて。 その視線を私に…というより、私のそばの加藤くんに鋭く向けて。 加藤くんは舌打ちをして、私をその腕から解放してくれる。 心臓がばくばくしている。 こわい…んじゃなくて。 晃佑の到着が遅ければ落とされていたかもしれない。 私は加藤くんに弱いようだ。 ある意味、本気でこわい。 ごめんなさい。晃佑。 殴られたくはない…。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加