Secret space

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加藤くんに落とされかけるある意味恐怖をいただいて、ばくばくした心臓を抱えながら、そこにいる晃佑に逃げるように手を伸ばす。 別れの言葉を告げたのだけど。 私が言ったのだけど。 晃佑に大丈夫ってぎゅって抱きしめられたい甘え。 加藤くんが妙な行動をしてくれたおかげで、私の心境はぐるぐる回る。 晃佑はバイクからおりると、まっすぐに私に近づいてきて、私が望むままにぎゅって抱きしめてくれた。 こわかった…。 ほんっとにこわかった。 晃佑以外の誰かを好きになる自分なんて考えたくもない。 ぎゅうって晃佑に抱きつくと、久しぶりの晃佑のにおいがして。 晃佑の少し高い体温を感じて。 別れたはずなのに、どんどん落ち着いてきた。 「……おまえ、知花に何した?」 「耳にキスしただけで特には何も。それだけでそこまで嫌がられるのもかなり微妙な心境。噛まれるし。 まぁ、これで元サヤでいいんじゃないか?おまえの腕の中に戻ってるみたいだし」 「…まぁ、おまえに惚れたってミクみたいに言われるよりは…。いや、だけど…。電話、挑発しすぎだろっ」 「挑発したのは最初だけで、あとは本音のつもりだけど?おまえがトモちゃんを諦めていて、トモちゃんがおまえを諦めたら俺を薦めるつもりではあったし。まぁ、順序まちがって先に嫌われたみたいだな」 いえ、嫌ってはいません。 最初から加藤くんに押されていたら…。 私はそれを考えて、ぎゅっと晃佑にしがみつく。 晃佑がいいっ。 加藤くんにはころころ転がされて完全に弄ばれるっ。 晃佑の元カノ、加藤くんにふらついた人多い気がする…。 加藤くんは晃佑の邪魔をしていると思う。 意識して邪魔をしてはいないのだろうけど。 「……殴り飛ばすつもりできたのに的がはずされた気がする」 「そこ、残念そうに言うな。トモちゃんにフラれてるのは俺だ。 …先に帰るわ。あとはお若いお二人で」 「単車に知花を乗せるの嫌だって。怪我させたくない」 「…待て、こら。そこで変な我が儘言うな。車に乗せて帰れって言うならとるぞ」 「やらない。これは俺の。おまえ俺の単車使って。おまえの車で帰るから」 「……俺がおまえ殴っていいと思うんだけど?」 なんて言い合いをひたすらしていたと思うと、二人はいつからかまた蹴り合いを始めていた。 言葉もなく、元サヤにされたっぽい。 大きな痴話喧嘩…みたいにされた気がする。 本気で泣いた私の涙を返せと言いたい。
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