Secret space

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「憧れの君にそんなことを望まれるなんて」 「なに?」 「俺なら本望だな。俺だけを捕まえていてくれるのなら、いろんな女を渡り歩くような遊び人でもいたくないし、いくらでも返すよ」 …惚れたらどうしよう。 晃佑にそう言われたい。 言ってくれないなら、わかってくれる加藤くんが……って、おい、私っ。 ……相性いいのも問題だ。 隙間を簡単に埋めてくれる。 でも…好きになればなるほど、その隙間を見せたくなくて。 言わなくてもわかってくれればいいのに…なんて勝手なことを思ってしまったり。 どれだけ相性がよくても、つきあえば、きっと隙間はあくもののような気がする。 つきあっていたいから。 一緒にいたいから。 言えない我が儘は出てくるものだと思う。 「男なんて単純だ。惚れた女の前ではいい男でいたい。俺とトモちゃん、やっぱり相性いいね。同じ理想を求められる」 同じ理想を…求めることができる人といるのが一番いいことなのだと思う。 私の心の中にすっと入ってきてくれるから嫌いだ。 落とそうとされなくてよかった。 加藤くんに私の家まで送り届けてもらって。 夏祭りのお土産もしっかりと手にして加藤くんを見送る。 少しすると晃佑のバイクが私の前に停まって。 「仕事までの時間、ここにいてもいい?」 そんな晃佑の一言に加藤くんにもらったどきどき以上に胸がきゅっとなる。 私が頷くと、晃佑は被っていたメットをはずして、私にその顔を見せる。 うれしそうな顔をしやがる。 …好き。 晃佑を私の家に入れて。 私は少しよそよそしくしてしまって。 晃佑は不満げに私の腕を引っ張って、私を抱き寄せる。 「…ごめん。俺…、女々しいかもしれないけど、諦められそうにない。着信拒否しないでほしい」 私の頭を包むように抱いて、そんなこと言ってくれて。 喜ばないでいられる私はいない。 自分の単純さに泣きたくなる。 「……ミクは?」 「おまえ、いい加減そこ忘れる気ない?俺の右耳、赤いのついてる?」 私は晃佑の耳のピアスを見る。 私が最初に晃佑からもらった、アクセサリーケースからもなくなっていた青いピアスがつけられていた。 「…忘れたい?」 加藤くんに言われたことを思い出して聞いてみた。 「…中途半端だったのはわかってる。忘れたい。おまえだけでいいって、俺、何回言ったと思ってる?その全部、口先だけだと思った?」
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