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「……おまえにもう一回フラれたくなかったし…。つきあっていないほうが喧嘩もなかったし…。つきあわないほうがいいのかなとは思った。
ミクと戻っても信じることなんてできそうにないとは思っていたけど、誰でもいいならミクと戻って穴埋めしてもらってもいいかとも思った」
「私、振ってないっ」
「振ったっ。酔ってないなら会いたくないみたいな態度で。俺を求めてくれなくて。俺が言わされたんだろっ」
晃佑は私を振り返って、私は頬を膨らませて晃佑を見る。
晃佑も不満顔で。
「……取り戻したいと思ってくれるなら、同意してくれてもいいと思う」
「嫌だ。事実をねじ曲げて同意したくない。俺が振ったことにしておけばいいけど、同意は絶対にしてやらない。おまえと会ってから、おまえを手離したいなんて俺は一度も思ったことがない」
それだけは本当に絶対だと言いたげに晃佑は言い切ってくれる。
微妙に…恥ずかしくなった。
うれしく思って、結んだ口元が綻びそうで。
私は晃佑から目を逸らして口に両手を押し当てた。
好きな人にそういうこと言われてうれしく思わないわけがない。
「……ねぇ?私に憧れていたって本当なの?」
それを聞いてみると、晃佑は赤くなって私から慌てたように顔を逸らす。
私はそんな晃佑を見れてうれしくて笑う。
「憧れってそんなもんじゃないって。ただ高校の頃見ていただけっ。前にも言った」
「彼女いたくせに見ているのおかしくない?やっぱり軽いんでしょ?」
「……おまえは俺を虐めるのが好きだろっ」
晃佑は悔しげに言って私を見て、私は晃佑のそばに寄って、その顔を下から覗き込むように見る。
じーっと見ると、晃佑は私の視線に困ったように私にその手で目隠しをする。
「……美人だなと見てた。つきあっていた彼女よりも。視線、合うのが恥ずかしくて、こっち見る前に目を逸らしてた。……その目にじっと見られるのは今も照れる」
「好きって言って。私の目を見て」
「……おまえ、やっぱり俺を虐めるのが好きだろ?」
私は笑って、晃佑の手をはずして、その目をまっすぐに見つめる。
「好き」
私が言うと、晃佑の視線は恥ずかしそうに私から逸らされて。
私は晃佑の頬を両手で押さえて、その唇にキスをした。
ねぇ?
足りないから満たされたくて恋をしたくなると思わない?
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