Special

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私は何度、別れて戻ってを繰り返せば気がすむのだろう。 …というか、原因が常に私にあるような気がする。 私は無意識に晃佑を振り回しまくっている気がする。 妄想の暴走で突っ走る私の性格は恋愛には向いていないのかもしれない。 なんていう自己嫌悪をしながらも、私は晃佑の家で、晃佑と肩を並べて、夏休みの旅行のためにパンフレットを眺めている。 ここの料理がおいしそうだとか、この宿の情緒がいいなぁとか。 候補は並ぶけど決まらない。 あっちもいいし、こっちもいいしと悩んでいたら。 「なぁ?知花って優柔不断?」 晃佑に聞かれて、ざくっと突き刺された気分だ。 「……た、食べたいものくらいはすぐ決めてるっ」 「優柔不断な医者って任せるのこわいよな」 ざくざく突き刺された気分になって、私はがっくりと落ち込む。 「誰だって迷うことくらいあるっ」 落ち込みながら言い返してやった。 「それはわかるけど。知花のあげた候補から俺が決めていい?というか決める。おまえ、迷いすぎ。放っておいたら俺の連休終わっていそう」 ひどいと思う。 わかるけど、わかりたくないっ。 認めたくない…。 晃佑は優しくないことも多々ありだ。 いや、決められない私が悪いけど。 ……だって、晃佑との初めての旅行で変なとこ選んでしまいたくないし。 慎重になりすぎて優柔不断とは言われたくないっ。 しかも晃佑の決め方は私のあげた候補からあみだくじで決めやがる。 何かが悔しい。 「晃佑はどこでもいいの?」 「幽霊出るようなとこでもいいかも」 私は絶対いや。 「どうでもいいってこと?」 「いってみないと何もわからないだろ。よくないと思えば次はやめておけばいいだけ。……ん、決まった。予約の電話入れよう」 晃佑は行動力がある人と言えるのかもしれない。 なければ、私は晃佑のそばにいなかったと思う。 私に手を伸ばしてくれるのは、晃佑だったように思うから。 けど。 強引だ。 「……その強引さでミクを即奪い返せばよかったのに」 呟くように口にすると、晃佑は少し怒って私の首を絞めるかのように、腕を首に回す。 「死ぬっ。死んじゃうっ」 なんて私が逃れようと暴れる隣で、晃佑は予約の電話を何事もないかのように入れる。 電話をにこやかに終えると、私の頬は摘ままれた。 痛い。
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