Special

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「俺は惚れていても、向こうにはそこまでの気持ちはなかった。…って言わせたいのか?女は寄ってくるけど、つきあえばフラれまくりで悪かったなっ」 晃佑は私の頬をぐにぐにやってくれて、私はその手から逃れようともがく。 余計なことを言ってしまうこの口が恨めしい。 「晃佑の元カノの中でミクだけ特別だから気になるだけだってばっ」 「だから惚れたことは認めてるだろっ。現在進行形で今も惚れてるとは言ってないだろっ。1年以上前になるものをそう何度も掘り返すなよっ」 両手で両頬を摘ままれて、私はあぐあぐともがいて。 晃佑はふと我に返ったかのように落ち着くと、私の顔を見て吹き出して声をたてて笑う。 ひどい…。 泣いてもいいよね? 晃佑は笑いながら、私の頬を撫でる。 大きな手のひらが私の顔を撫で回す。 「今はフラれてよかったって思ってる。ミクにフラれてやけ酒のように飲みまくった日におまえに会えた。……どうやって持ち帰ったのかは記憶ないけど。酔っていてもおまえは俺の好みだったってことだと思う」 うれしそうな笑顔でそんなことを言ってもらえると、さっきまで散々虐められていたのに、ちょっと赤くなってその顔に見とれる私がいる。 尻尾が私にあったら、ゆらゆらゆっくり揺れてる。 さっきまで怯えたようにぺたんとなっていたのに、かなり現金だと思う。 だって酔っ払い晃佑にお持ち帰りされたのは、晃佑がすごく好みなんて言ってくれたからで…。 それが嘘でも本当でもすごくうれしくて…。 で、そんな言葉を酔ってない晃佑に言われると…。 私に尻尾があったなら、ぱたぱたぱたと興奮して床を叩く勢いで揺れてる。 でも私に尻尾はない。 うれしいとは恥ずかしくてどこか言えない。 うれしいのに言えない。 「でも引きずっていたよね?」 なんて掘り返すようなことをまた口にしてしまって、晃佑はまた私の頬を摘まむ。 笑顔がフリーズしてさっきよりこわいかもしれない。 そして痛い。 「フラれたくせに未練残していて悪かったな。おまえにミクと同じものを求めて悪かったな。何度言わせる?何度掘り返す?まだ何か言うか?」 こわい…。 怒っちゃいや…。 私が悪いのはわかっているけど。 気になって当たり前のものを晃佑も私に残してるっ。 ……過去を気にしても仕方ないけど。 その過去もすべて私だけならいいのにって、そんな…独占欲。
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