Special

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朝、目が覚めて、私は記憶の中のものに頭を抱える。 ……記憶なくしてしまうほうが恥ずかしくなくていいかもしれない。 責任もちたくない。 ものすごく醜態晒しまくった。 晃佑が起きる前に逃げようとしたら、晃佑の手は私が動き出すことに気がついたかのように抱きしめてくる。 「おはよ…。……酔いさめた?」 「…ものすごく恥ずかしいんですけど」 「ものすごくかわいかった。素直じゃないのもいいけど、あそこまで素直な知花もかわいい」 晃佑はその顔を私の体に擦り寄せて、肩から胸、胸からお腹。 どんどん下にその髪が私の体の上を滑っていく。 「おねだりは?なにして欲しい?」 晃佑のその言葉に真っ赤になって、私はベッドから逃げ出した。 もう飲まない。 絶対に飲まない。 ハタチなのに、子供みたいに甘えまくりだった自分が恥ずかしい。 そしてそれを晃佑が普通に受け止めてくれちゃうからっ。 「…覚えてる?俺、あんな知花でもいいよ?むしろ、かわいいかも。なんでもしてあげるから、ねだってみ?縛ってやろうか?心も体も全部」 背後から晃佑のそんな言葉が聞こえて、私は本気で立ち直れそうにないくらいに崩れ落ちた。 縛って。心も体も…。全部。 晃佑だけの私でいるから…晃佑も私だけの晃佑でいて…。 なんでもする。晃佑が喜んでくれるなら、なんでもする。 もっと食べて。 晃佑以外いらない。 何を口走ってるんだ?私。 縛るってそういう意味? 束縛されたいってこと? でもおまえ、全然ふらついてもいないし、縛るものないって。 えっと…言うなら、そのままでいてくれとしか言いようがない。 おまえだけだって。 本気で惚れてる。 疑うなら疑ってもいいけど、俺は自分からおまえを離すつもりはない。 俺がおまえから離れたくないから。 何を口走ってくれている?晃佑。 「一緒に風呂入ろうか?知花。風呂のあと、天気もいいし前にいきたがっていた博物館でもいってみる?」 なんて晃佑は言いながら、いつもの休日の朝を始める。 全裸で歩くなと言いたい。 せめてぱんつをはけと言いたい。 私の家でも同じようなことをするなと言いたい。 晃佑はバスタオルを取り出すとそれを体にひっかけて、振り返って私を見て笑顔で手招きしてくれる。 私はそんな晃佑をぼんやりと眺めてから、晃佑のところに駆け寄る。 …私は犬だったかもしれない。 リードに繋がれて散歩に連れていってもらうのが大好き。
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