Special

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喧嘩して仲直りしてを繰り返して、私は晃佑を知っていく。 嫌なところもあるけれど、好きなところのほうが多いかもしれない。 耳の奥に残っている晃佑が言ってくれた言葉を何度も繰り返している。 おまえを離すつもりはない。 大きな喧嘩をして離されてしまうこともあるかもしれないけど。 同じ気持ちを持てたなら、すごくうれしいことだから。 私もあなたを離さない。 挫けてしまわないように。 つらくて苦しいことがあっても、晃佑を信じていられるように。 今の大好きと思うこの気持ちが続くことを願う。 どれだけ傷つけても、傷ついても、一緒にいたいのはただ一人。 私はアクアマリンのピアスをつけて、晃佑と手を繋いで映画へ。 休日くらいしか出かけていないかもしれない。 平日の夜は基本、家でテレビを見たりのんびりしている。 これはきっと私のペースのつきあいだろうなとは思っている。 晃佑は私に合わせてくれている。 だから映画の帰り、私から晃佑の行きつけのお店にいこうって誘った。 わかってる。 そこには私が苦手に思う人もいるかもしれないことは。 それでも…晃佑の彼女でいたから、晃佑の知り合いをたくさん知っておきたいとも思う。 初めて晃佑に連れていかれた、初めて晃佑とキスをしたあのクラブに連れていってくれた。 晃佑はすぐに声をかけられて、久しぶりだからか、どんどん人に囲まれてしまった。 私は無言でそんな晃佑を見上げて見ているだけ。 「コウの彼女、こっちおいで。つまんないでしょ?」 なんて女の子に腕を引っ張られて、少し怯えてしまいながらも、晃佑の手を離してついていく。 女の子ばっかりのグループの席に座らせられて、これ食べる?これ飲む?って次々に声をかけられて。 なんだか接待されてしまった。 「…あのっ」 私は思いきって声をあげて、私の腕を引っ張って連れてきてくれた子は、人当たりのいい笑顔で私を見る。 「……嫉妬、しないですか?」 「え?なんで?」 「晃佑の彼女だから…」 私が答えると、その子は声に出して笑う。 「コウのまわりにいる女がみんなコウを狙ってるわけないし。私、彼氏いるもん」 私はなんだかすごくほっとした。 そういう人ばかりだったらどうしようって本気で思った。
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