Special

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「でもコウ、モテるよね。彼女いない時期あるのかってくらい」 「そういう彼氏って不安にならない?すぐに浮気されそうで私は嫌なんだけど」 「あ。そういえば今日、ミクきてなかった?コウの彼女、早くコウ連れて帰ったほうがいいかも」 女の子同士のその会話。 ミクの名前が出てきて、私はどうして?って顔を見せたと思う。 「ミクって晃佑の元カノ?会わせないほうがいいの?」 「そう。元カノ。ミク、また男にフラれたからコウに甘えていきそう。コウに彼女がいてもいなくても関係ないって感じの子だから」 「彼女の不安を煽らないのっ。ま、ミクは誰でもいいんだけどね。男前なら。別に悪い子じゃないよ? 気を抜いたら横から彼氏、かっさらわれるけど」 声音を変えてその子は言って、私は不安になって晃佑のほうを見る。 ミクに会わせるつもりでいきたいって言ったわけじゃない。 「よしよし。奪われたね。その程度の男なんだし、終わってよかったんだって。で、あんたのほうが不安を煽ってる。 コウの彼女も、ミクに戻るような男なら、その程度の男だから。それくらいの余裕持ったほうが、放し飼いできて楽だよ」 余裕…。 ないわけじゃないけど…。 ミクに対しては余裕ないかもしれない。 現在進行形じゃないのはわかってる。 晃佑は私を好きでいてくれているから。 酔った私に機嫌をとるためだけにわざわざ偽りを言ったりはしないだろう。 私を追ってくれたりはしないだろう。 でも…。 また私が自分のつきあいにヒビを入れるようなことをしている気がして。 「ありがとう。ごめん。やっぱり不安だから戻るね」 私はそう声をかけて立ち上がる。 「煽ってごめんね。けど、大丈夫だよ。今のコウは前のコウと違うから。自信持ってね」 その言葉、すごくうれしかった。 私は笑顔で頷いて、その子も笑顔を返してくれて。 手を振ると私は晃佑のところへと急ぐ。 友達になれそうな気がした。 見た目、これでもかってくらいに派手な子なんだけど。 利害を求めず、がんばれって応援くらいはしてくれる。 相手の気持ちを少しは汲んで。 そういうのが友達のような気がする。
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