Special

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「……私もあなたと晃佑を共有する気なんてないから。もう晃佑に声をかけないで」 私はミクにそう言っていた。 ミクの気持ちはひどく軽い。 たとえ僅かでも晃佑にミクに残る気持ちがまだあったとしても。 私はミクに晃佑を渡したくない。 渡そうと一度別れたことを後悔するくらい、そんな遊びに晃佑をつきあわせたくない。 それに私は…。 ミクの視線を感じながら、私は晃佑の腕に寄りかかって見せつけた。 ここにいたい。 「晃佑はあなたの玩具じゃないの。私の彼氏。二度と気安くふれないで」 ものすごく敵意を剥き出したと思う。 ミクは何も言えなくなったように言葉を返してくることはなく。 私は晃佑の顔を見上げて、その手を引っ張るように歩き出した。 晃佑は私についてくるように少し歩いて。 手を離したと思ったら、私の肩にその腕を乗せてきた。 その顔を見るとにやついていやがる。 妬かせるのが好きって厄介だ。 こっちはいい気分なんかじゃないっ! 「家、帰る?知花んちに帰ろうか?」 「飲み直そう。加藤くん、バイトしてるかな?加藤くんのお店いこ?」 私が言うと、さっきまでのにやついた晃佑の顔は一気に不機嫌になる。 「なぁ、知花。それって仕返し?俺のは不可抗力だろっ。それにちゃんと断った。…黙らせたのは知花だけど」 「仕返しなんかじゃないってば。普通に飲みにいきたいだけ。なんで仕返しになるの?」 「おまえな、隆太に狙われてるって思わないのか?」 まったくもって思わない。 私と晃佑を戻してくれたいい人だ。 狙ってくれているようで、あの妙な行動以外は距離がある。 電話越しだったり、そういう心境じゃないっていう状態のときだったり。 どきどきはしても、加藤くんは私を落とそうなんてしていない。 会話はほぼ晃佑のことばかりで、いい相談役になってくれる。 よく考えてみるとそうなのだ。 その距離があっても、晃佑の元カノで加藤くんに落ちた人もいるかもしれないけど。 「大丈夫。晃佑が見張ってるから」 私はすべてのかわりにそう答えた。 「……酔っても見張っていられるかな。俺」 「大丈夫。加藤くんに見せつけようと私に絡みまくるだけだから」 「あんまり変わらないのな、俺」 私はうんうんと頷いて、晃佑と手を繋いで加藤くんのいるお店に向かう。 加藤くんにはまた迷惑カップル扱いされるだろう。 それもまた…うれしいかもしれない。
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