Special

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ここにいること。 ここにいてくれること。 深いことなんてわからないけれど、誰でもいいと思うわけでもなく、たった一人、その人といたいと思うこと。 同じように思ってくれる人がいること。 それが私にとっての恋愛。 つきあうことの意味なんて、やっぱりよくわからないかもしれない。 だって好きだから一緒にいたくて。 好きだから離れがたくて。 つきあっていてもいなくても、私のたった一人の人は一人だけ。 でも…そう。 相手のたった一人の人という位置を与えてもらうこと…かもしれない。 晃佑が私にそう見せてくれるから。 それって…かなり特別なんだなと思う。 私にはあなたしかいないとは言わないけど。 今の私には、あなたしか、いらない。 晃佑は私の顔を両手でひたすら撫で回す。 どこか不機嫌な顔で。 「何かついてる?」 「もうちょいブサイクなメイクする気ない?」 は?と思わず言ってしまいそうになった。 「…メイクしたらブスって言いたいの?」 私は少し不機嫌になって聞いた。 「知花の顔はすっぴんのほうが好き。タヌキみたいなメイクして?」 素顔が好きって…、うれしいのだけど。 タヌキ? 「ねぇ?普通、すっぴんでいてって言わない?」 「言わない。俺だけが知っていればいいから」 微妙なことを言われている気がする。 メイク…がんばってるのに、それ誉めてくれるわけじゃなく。 うれしいのだけど、うれしくない。 「メイクしてるのもかわいいって言ってよ」 「かわいい。だから外いくときはメイク絶対な?目の下にクマがあるくらい塗って」 タヌキ…。 「そんなのいやだってばっ。かわいい彼女だって見られたいじゃないっ!」 「見られなくていい。おまえは俺だけに惚れられていればいいだろ?」 何かが違うっ。 元カノたくさんいるくせに、なんで女心がわからないっ? 晃佑の本当にフラレる理由って、もしかしてこれっ? 「だったら晃佑も丸刈りにでもしやがれっ!」 痴話喧嘩。 何度も繰り返す痴話喧嘩。 そして私の恋愛は、日々変わらず過ぎていく。 私の、晃佑の、恋愛期間を更新し続けて。 本当は……丸刈り晃佑なんて見たくないかもしれない。 百年の恋が冷めたらどうしようっ? Fin 2012.5.3
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