Destiny(Kosuke↓all)

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あけられた穴を埋めようとしているのかもしれない。 今までもそうやって、つきあって別れてを繰り返してきた。 まだ二十歳だというのに、あまりにも薄いつきあいだらけで、元カノが100人近くいる。 初めてつきあったのが中学でも、1年に何十人とつきあっているんだかといったところだ。 別れはすべて俺からじゃないけど、なんというか、俺ってそんなもんなんだなと思い知る。 いや、その前にそれはつきあっているとは言わないだろう。 俺は…つきあいたくて…つきあったのだけど。 ただ少しの特別な友達。 繰り返すうちに、惚れるとかもよくわからなくなった。 つきあう意味なんて別に…ない。 俺はそうつきあった女たちに教えられたと思う。 最後は友達になるのだから。 それでも…つきあっているのは、つきあっている間は、その相手は俺だけのもの。 杉浦にそんな一時をくれと言っているに過ぎない。 過ぎない…のだろうか? もしも俺に惚れてくれたら…。 そんな夢みたいなことを考えて、甘いなと自分に言い聞かせるように思う。 胸の中には空洞。 右耳につけた深紅のピアスにふれるように耳を塞ぐ。 本気で誰かに求められたい。 俺を。 愛して。 休前日の俺の行動はいつもの店に飲みにいくこと。 ほぼ日課のようになってきている杉浦への電話も忘れない。 めずらしく俺がなついていると思われる。 気にしてやらない。 杉浦の声は俺の癒しだ。 拒否られまくりだけど。 その顔は本気で好みなのだから、どうしようもない。 俺の相手をしてくれているというのだけでも、うれしかったりする。 連れにはなれていると思う。 「出てこいって。どうせ暇だろ?大学生。遊ぶ金くらい奢ってやるって」 俺は携帯を耳に押し当てて、いつものように杉浦を誘いだそうとしている。 まわりの音がうるさくて、人気のないところに移動して、そこにしゃがみこんで。 杉浦は大学に通っているらしい。 その進路さえも知らなかったのに、杉浦のことを知ってきていると思う。 進歩だ。 『私、紫苑くんの彼女じゃないです』 いつもの拒否を当たり前のようにいただいた。 気にしてやらない。 けど、俺のことを呼ぶ名前はそろそろかえてもらいたいかもしれない。
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