Destiny(Kosuke↓all)

9/14
前へ
/606ページ
次へ
「コーウ」 なんていう声が聞こえてきたかと思うと、俺はいきなり背中に乗りかかられた。 きゃっきゃっと楽しそうに笑ってる、酔った連れの女。 べったりとくっついてきて甘えている。 電話してくると言って、こいつらから離れたというのに。 「今、電話中」 「来ないなら放っておけばいいのに。コウ、キス」 「ん…」 俺はせがまれて、そのタコのように突きだしてくる唇に軽く唇を当ててやる。 これで戻れと言うつもりで。 酔ったらキス魔になる連れを持つのはやめたほうがいいかもしれない。 ちゅっと、軽く音が向こう側に聞こえたのか、俺の耳には即、電話の切れたあとの機械音が届いた。 俺は無言で携帯を見て、こんなことで諦めきれるはずもなく、即かけなおしてやる。 コール数回、電話は繋がった。 「チカ、電話きれた。…きった?」 きったよな? こんなこと今までなかったのにっ。 あの程度のことで切るなと言いたい。 『もう寝ます。おやす…』 「一緒に寝ようか?家きて」 俺はチカが言い終わらないうちに言ってやる。 キスくらい、チカにならいくらでもしてやるっつぅの。 その前に会ってもいないし。 「コウ、口説くこと楽しんでる?」 なんて、俺の背中におぶさるかのようにくっついたままの女は言ってくれて。 「ちょっ、うるさいってっ。また電話切られちまうだろっ」 俺は慌てて女を他の奴らのところに追い返そうとがんばってみる。 「切られちゃえば?家いってあげるよ、あたし。女ばかり集めていってあげようか?」 女はにっこりと酔った顔で俺に笑いかけてくる。 俺の部屋を二次会場所のように使うなと言いたい。 「いらないっ。ほら、さっさと戻れよ。 もしもし?チカ?………チカ?」 応答なし。 携帯を放置されてしまった模様。 俺はその場に両手と両膝をついて、崩れ落ちそうなほどショックを受ける。 俺、なんにもしてないのにっ。 キスはしたけど、こいつにとってのキスは酔ってる間の遊びだ。 相手は誰でもいいんだってっ。 「…フラれた?」 「おまえのせいだろっ」 俺が泣きそうになりながら言い返すと女は笑いやがる。 せっかくここまできたのに、ここで終わりにはできないっ。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加