Destiny(Kosuke↓all)

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「とにかくおまえは戻れ」 俺は再度かけ直しながら言ってやる。 コールは6回で留守電に切り替わる。 くっ……。 俺は再度かけ直す。 留守電、留守電、留守電…。 めげそうだ。 「なんかコウにはめずらしく執着してない?ただの友達なんでしょ?」 「今はただの友達だけど、絶対に落としてやる。…って、めずらしいか?」 俺は顔をあげて、こっちをじっと見ていた女に聞いてみた。 「うん。めずらしい。本気で口説きにかかってる?」 にやにやと俺をからかうように見てくれる。 「…かも。こいつしか次の彼女いらない」 「マジ惚れっ?うわーっ。コウがっ?マジ惚れっ?」 なんか大きな声で騒ぎやがる。 何がそんなにおかしいのだと言いたい。 「とにかくおまえは帰れ。戻れ。うるさい。また邪魔するだろ」 俺は手で女をしっしっと払って、繋がらない電話にまたかけて、留守電を聞く。 本気で挫けそうだ。 「……ま、がんばって?」 酔った頭でもようやく理解してくれたのか、女は俺ににやついた顔を見せて言うと、楽しそうな足取りで帰っていく。 誰かのところまで連れていってやればよかったかなと思いながら、チカにも電話かけたいし。 電話のほうを優先。 何度かかけていると、電話は留守電ではなく、保留メッセージになった。 コール1回、保留。 手に携帯を持っているかと思われる。 何度も繰り返してやった。 きっと俺の携帯代はいつもより膨れてしまっているだろう。 それでもそこにいて、俺のコールを見ている。 何度も繰り返す。 さすがに泣きそうになってきた。 やっと電話に出てくれたときには、俺は口説きにかかることもできず。 「チカっ。おまえ、最悪っ」 なんていう恨み言。 さすがに切られると思った。 『もう…』 「…おまえに会いたい」 チカが何かを言いかける声に被せるように、本当に言いたいことをシンプルに言った。 会いたい。 ただ、それだけ。 「おまえの顔忘れそう。会いたい。…会おう?なぁ?」 『また酔ってるんでしょ?』 「…ちょっとしか飲んでないっ」 『……酔い潰れたら会ってもいい』 またかわされている気がする。 酔い潰れたら記憶なくなるのに。 わかっていて言われているんだろう。 「今会いたい」 俺は心の底からその言葉を吐いた。 誰か…じゃなくて。 おまえに会いたい。 その姿を遠目から見られるだけでもいい。 高校の頃の俺のように。
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