Destiny(Kosuke↓all)

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どれだけ毎日話していても、素っ気ないし、冷たいし、つれないし。 まったくもって脈がないのはわかってる。 けど、でも、その声を耳元に聞いているのが好きだったりする。 なんか落ち着く。 はっきり言って俺のことばかり話している気がするけど。 会いたい気持ちは伝わらず、おやすみで電話を終えた。 満たされない。 けれど、満たされる。 脈もないのに、わかりきっているのに、微妙に俺の女扱いかもしれない。 チカにしか電話をかけていないから。 かかってくる電話は出るけど。 俺からかける電話はチカにばかり。 って、こんなこと言っても、チカは薄い反応しか見せてくれないのだろう。 惚れられたい。チカに。 埋めてほしい。 俺の中の隙間。 右耳のピアスにふれて、その石を指先で撫でる。 『似合う?真っ赤なピアス』 彼女が俺にそう言ってこれを見せてきたその言葉を、その情景を思い出した。 俺と会うときは決まってこのピアス。 俺の家に泊まって、風呂に入るときにはずして。 そのまま忘れ物。 『コウちゃん、赤も似合うね。でもそれ私の。あげないっ』 俺が忘れ物をつけてみるとそんなこと言って。 言うくせに何度も忘れ物。 …何度も家に泊まっていた。 長い…黒髪。 髪に指を絡ませても、すぐにほどけ落ちる。 手櫛でかきあげると、俺を見て笑みをこぼす。 どんどん溢れるように思い出す過去に溜め息をつく。 あの時間はなんだったんだろう?なんて意味のないことを考えて虚しくなる。 もう別れた。 別れて1ヶ月だ。 なんでこんなにうだうだ思い出しているんだろう。 頭を横に振って、息を一つついて立ち上がり、足を軽く伸ばす。 しかも、チカに会いたいって本気で言ってから何時間もたっていないうちに、その女を思い出している。 会いたい。チカに。 埋めてほしい。その隙間。 …チカはあの女のかわり? 同じ黒くて長いストレートの髪。 いや、けど顔は全然違う。 チカのほうが大人びていて美人だ。 何人もの男に言い寄られるから…あんなにつれないのかな。 もっと…かまってほしい。
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