Dainty girl

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顔に当たる眩しい日差しに右手で目元を隠して。 朝だなと思いながら、左腕の重みに気がつく。 なんだろう?と、ゆっくり目を開けると、目の前に見えたのはチカの顔。 俺は思いきり驚いて瞬きを繰り返す。 何かの夢か幻か。 あれだけ手強い相手だと思ったのが、俺の隣で眠っている。 しかも。 なぜか猿ぐつわを噛まされている。 俺は裸で。 チカも布団の中に入ってはいるけど、その白い胸元の肌が見える。 裸だ。 一瞬、思考回路停止。 何か、またしても、俺は酔って記憶をぶっ飛ばしている間に、チカとしたようである。 理解はできても。 まったくもって理解できないっ! 何がどうやってどうすれば、こんなふうに同じベッドで眠れるんだ?と自分に聞きたい。 俺は一体、何をしてチカをここに連れ込めたのか。 しかもなんでまた猿ぐつわ…。 なに?SM? 俺、そんな趣味あったか? ひたすら一人で混乱しまくって、チカはなかなか起きる様子もなく眠っていて。 混乱しながらも、そっとチカの頭を胸に抱き寄せてみようとして。 「ん……」 なんていうチカの声にびくっとして飛び離れる。 いや、なにか殴られそうな気がして。 鼓動はバクバクしていて、一先ずその頭を腕枕から枕へと移して。 ベッドの脇に落ちていた下着をはいて。 チカの寝顔をあぐらをかいて眺める。 ……記憶がない。 どれだけ思いだそうとしても思い出せない。 チカと2回したはずなのに、俺はまったくチカの体を覚えていない。 感じてくれていたのかなんてこともわからない。 どうやってこんな変態プレイになったのかも謎だ。 ……ものすごく、何かを逃したような気がして淋しい。 チカの瞼が揺れて、ゆっくりとその目が開く。 俺は無言でその口を覆う布をはずしてやる。 「……記憶にないんだけど」 俺ははっきりと、じっとチカの顔をまっすぐに見て告げてやる。 記憶にないことを誤魔化すことはしなかった。 というか、チカだって俺の記憶が飛ぶことをわかっていてしたような気がする。 何かを悲しむ様子もない。 それでいいと言われている気がする。 俺にとってはまったくもってうれしくない。 抱いたのに、したのに、その記憶がカケラもない。
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