Dainty girl

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「また奥にいっぱいされたからお腹痛い」 思わず次の言葉に詰まる返事をいただいた。 記憶にはないけど…、それはちょっと恥ずかしいかもしれない。 ……したのは、きっと俺なんだけど。 痛い…と言われると、強引に持ち込むのはどうだろう…と少し考えてしまう。 傷つけたいわけではないし、強く拒否をされると…できない。 嫌われそうで。 「奥にはしないからっ。なっ?」 俺はチカの顔を覗き込むように見て、誘うというより頼むみたいになって言ってみた。 チカの視線は俺を捉えて。 「二度と…会わないほうがいいって思わない?」 そんな言葉を表情も変えずに吐いてくれる。 もう二度と会いたくないと言われた気がした。 その体が欲しいと思った欲望も一気に冷える。 本当、チカとどうやって、そういうことになったのか謎だ。 何をすれば、何を言えば同意が得られるのかなんてわからない。 「……俺はおまえとした記憶が欲しい」 本音で本気で言ったけど。 「してない」 チカはかわしてくれる。 「してないのに子宮口突かれるわけないだろっ」 「妄想」 「ないっ。嘘はもういいからっ」 言っても、まったくもって応じてくれる気配もなく。 ひたすら同じようなやり取りを繰り返して。 俺は溜め息をつきたい気分で渋々と諦める。 下手に誘って、胸の中に大きな重いものを逆にいただいてしまった気がする。 チカがどういうつもりで、酔った俺と2回目をしたのか。 まったくもって理解できそうにない。 惚れてくれていると勘違いでもいいから思わせてくれる態度が欲しい。 嘘でもいいから、どうせなら好きだと言ってもらいたい。 その嘘に騙されて喜ぶこともできる。 ……嫌われてるのか、俺に興味はないのか。 ネガティブ思考を振り払って、俺は気を取り直して朝食を用意することにした。 言っても、俺がそんな大層な料理を作れるはずもなく。 パンを焼いてインスタントコーヒーを淹れるだけ。 前は朝食だのなんだの考える前に逃げるように帰ってしまったし。 うん。これも進歩だ。 ……俺の彼女にしたいという望みは薄すぎるけど。
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