Dainty girl

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俺がチカに求めたいことと、チカが俺に求めていることに違いがあるような気がする。 あるような気がするけれど、チカが何を求めてくれているのかもわからない。 何も求めてはいなくて、ただ、俺に引っ張り回されてくれているだけなのかもしれない。 それを認めてしまうと、俺が電話をかけているのは、本当に迷惑なのかもしれないと思って凹む。 思えば片想いなんてものをしたことがないような気がする。 惚れたことが俺にあるのかもわからなくなってきた。 俺はどの女とつきあってみても、いつも連れの感情だったのかもしれない。 ……そういうことにしておいたほうが、自分を傷つけなくてすむ。 待ち合わせ場所にしたファッションビルで軽くウィンドウショッピングデート。 給料前で金がない。 ないけど、俺は俺に引っ張られてつきあってくれるチカをつきあわせていた。 俺はチカと一緒にいたいし。 我が儘だなと我ながら思うけど。 つきあってくれるなら、つきあわせる。 俺が求めているから。 チカに今着ているものとはまったく違う感じの服を当ててみる。 なんでも似合ってくれる。 かわいい。 派手というよりも、女らしくセクシーなものを着せたいかもしれない。 「これとこれの組み合わせで。ファッションショーして?絶対似合うから」 俺は俺が選んだ俺好みの服をチカに持たせて、更衣室へとチカを押し込む。 見たいだけ。 自分好みの服を着てもらいたいだけ。 チカは拒否をすることなく、大人しく更衣室に入ってくれて。 周辺、女だらけで視線を感じながらも、チカが着替えて出てきてくれるのを待つ。 ひそひそと漏れ聞こえてくる女たちの声。 …もう彼女ってことにしておこうかと思う。 チカは拒否だろうけど。 「着れた?見せて」 そろそろいいだろうと、俺は更衣室の中に声をかける。 チカはちゃんと着てくれて、恐る恐るといった感じにその扉を開けてくれた。 思わずうれしくて笑みがこぼれる。 本気、かわいい。 ナイスバディ。 顔も美人でスタイルもよくて。 どちらかといえば清楚な雰囲気で。 本当、俺には高望みの女だと思う。 狙ったのがまちがっていたのかもしれないけど。 仲良くなれているのだから、もうそれでいいとも思う。 どうせチカは拒否しかしないし、俺の中でだけは…特別な人という位置において。
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