Dog house

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「ねぇ、コウちゃん。これって運命だと思わない?私とコウちゃんはつきあう運命だった、みたいな?」 ベッドの上、ミクは俺にうれしそうな笑みを見せて言ってくれる。 ラブラブ絶好調。 「なんだよ、それ。ベタすぎ」 俺は照れ隠しに笑いながら、そんなこと言って、ミクの背中に腕を回してベッドの上を転がる。 ミクは笑いながら、俺の体の上に乗って、俺を見下ろして。 俺の顔中にキスなんてしてくれて。 本気、ラブラブ。 いかにも恋愛中。 俺はミクの頭の後ろに手を当てて、見つめあってから唇を重ねて。 ………目が覚めた。 真っ暗の部屋の中で、ものすごく鬱になりそうになる。 俺は一体、いつまでミクのことを覚えていて、それを夢にみてしまうのか。 運命…ね。 運命は宿命ではない。 動くもの。 変わるもの。 誰かが連れてくるもの。 別れも…運命だったんだろう。 俺は右耳のピアスにふれて、いつものようにそこにあるものを指先に感じる。 未練たらったら。 そこから逃げるように、俺は携帯を手にして。 出るはずのない番号に電話をかける。 そこに甘えているだけなのだろう。 そう思うと溜め息が出る。 けど、俺はこうやって、新しいものに癒されて別れを乗り越えてきたと思う。 コールの音を聞いているだけ。 相手は出ない。 出ないとわかっているのに、またかけている。 甘えている。 拒否をされまくっているのだから、他の誰かにすればいいのに。 一番情けない姿を晒すことになるのだから、他の誰かにしておけばいいのに。 コールの音を聞きながらベッドの上を転がる。 目を閉じて、その音を声のように聞いているだけ。 求めている。 まだ諦めきれずに。 おまえがいいと求めている。 やめておけばいいのに。 「……愛して。俺を」 コールに向かってそう呟いた。 求めて。 返すから。 愛して。 癒して。 思いきり甘えてばかりの俺。 セックスはいらないから… 抱きしめて。 それだけでいい。 俺にふれて。 ここにいるから大丈夫だとふれていて。 甘えさせて。 求めてばかり。 ……会いたい。
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