Dog house

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チカに惚れている? …惚れる気持ちを見失っている。 うまくは言えないし、その大きさを言葉にするのは難しいけど、好きだと思う。 興味はずっとある。 どんなに冷たくあしらわれても、他の女を見ようとは思わないくらいに。 受け止めてくれているわけでもないのに、そこに甘えていたい。 俺はチカに気を許しているのだろう。 かっこ悪いところは高校の頃に見られまくっているし。 別に今更、俺はいい男だと振る舞うつもりもない。 自然体でいられる。 ただ、いいところも見せたくて。 かっこつけたものも見せたくなって。 あまり醜態ばかり晒してしまいたくない。 惚れられたい。 愛されたい。 チカに。 求めている。 そばにいること。 叶わないことばかりなら、せめて連れではいてほしい。 約束の時間までが仕事も休みで長かった。 寝て、起きて、寝てと繰り返すだけの急な休み。 時間に間に合うように家を出て、チカとの待ち合わせ場所へ。 チカは携帯を手にビルの壁にもたれて待ってくれていた。 朝の電話が夢のようにも思っていたし、待ってくれていたことだけでもうれしい。 「なに食べたい?」 「……あっさりしたもの」 「この時間であっさりって…」 俺は何があるか考えてみる。 時間は23時。 喫茶店の軽食、居酒屋のサラダ、24時間営業の丼屋のうどんやそば。 けっこうある。 「コンビニサラダが食べたい」 チカは食べたいものをはっきりと口にして、俺は小さく笑って、チカの手を握って歩き出す。 チカは斜め後ろ、ついてきてくれる。 「安上がり」 「奢ってくれるの?」 「当たり前だろ」 「なんで?」 「呼び出したのは俺だから」 嘘。 ただ、いいところを見せたいだけのかっこつけ。 コンビニで買い物して、俺の家にチカを連れて帰って。 泊まり前提というわけではなかったけれど、チカは遠慮も拒否もなく、俺の隣にきてくれて。 俺はチカの背中からその体を抱きしめてベッドへ転がる。 部屋の明かりを消して、 目を閉じて、その髪に顔を埋める。 満たされる。 気持ちいい。 チカの髪に顔を擦りつけていると、俺はいつの間にか眠っていた。 目覚ましの音が鳴り響くまで。 チカは俺にとって、強力な精神安定剤かもしれない。
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