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「どれくらい前に別れた人?」
そこをチカに気にしてもらえるとは思わなかった。
思わずにやついてしまう。
「気になる?嫉妬?」
にやつきながら聞くと、チカは何も答えずに俺から顔を逸らしてくれる。
けど、でも。
嫉妬してもらえたのがうれしい。
少しは俺に対する独占欲みたいなのがあるのかなと思えて。
はっきり言って、チカはそんなもの見せてもくれない。
言ってもくれない。
ただ俺が誘うままに出てきてくれて、ただ俺が誘うままに家にきて添い寝をしてくれるだけ。
チカから何かをして欲しいと言うとか、今みたいに俺にふれるとか、そういうこともなかった。
俺はチカの体に腕を回して抱きついて。
「チカと会う1週間前くらいに別れた女。もっと妬けば?」
なんて言ってやると、チカは俺の腕から逃げようとしてくれる。
「私、晃佑の彼女じゃありません」
「もう彼女でいいだろ。俺のこと嫌いじゃないから、呼べばくるんだろ?だったらつきあっていてもよくないか?」
俺はいつものこと、何度も口にした、いい加減言い飽きたくらいの言葉で口説きながら、その体を求めるように太ももを撫でる。
チカの手は慌てたように俺の手を止めようとしてくる。
「暑いから離れて」
暑いわけがない。
チカの体は冷房の風で冷えている。
冷房かけすぎと言える。
「…おまえな、いい加減、そうやってかわすのやめろ。冷房ガンガンにかけてる。…しよ?」
逃げようとしまくって俺に背を向けたチカの背後、その耳元に声をかけて。
片腕をチカの腰に回して、その体を引き寄せて。
片手でその胸にふれる。
柔らかい。
求めるままにぎゅっと掴むと、チカは俺から顔を逸らしまくってくれる。
嫌がっている。
しようとすれば嫌がる。
抱き枕にはなってくれる。
いつもと変わらない。
何をどうすればチカが同意をしてくれるのか、まったくわからないまま。
何も変わらない。
どうして俺に引っ張られるまま、ここにいてくれているのか。
何を求められているのか。
何も求められていなくて、ただの暇つぶしのようなものなのか。
俺はどこまで求めて、どこまでふれていいのか。
わからないまま。
力づくで押し倒すことも可能だ。
俺は胸にふれていた手をチカの顎に当てて、その顔を俺のほうへ向けさせる。
逃げられてばかり。
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