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逃してしまうのは俺だけど。
俺は振り返らせたチカの目をじっと見つめて、そこにチカの気持ちを見ようとするけど。
チカの視線は俺から逃れるように逸らされる。
同意なんてチカが本当にしたのだろうか?
そっちのほうを疑う。
「チカ、せめて1回だけでもおまえを記憶に残させてくれる気ないか?したことあるはずなのに、俺の記憶にはないんだぞっ?」
なんて頼むように言ってみると。
「晃佑としたいって言う子は他にいるでしょ?」
かわしてくれる。
もうパターンかもしれない。
これで同意なんてないだろと思う。
「話逸れてる。俺はおまえに言ってるの。…キスもしたことない。いや、したかも知れないけど、俺の記憶にない。
……無理矢理されるのが好きってわけでもないだろ?」
問いかけてもチカは何も答えてくれなくて。
「…もしかして酔ってるとき、無理矢理した?そっちのが好き?おまえ、縛られていたし。でも呼べば出てきてくれるし…、嫌われてるとは思えないんだけど」
俺は聞いているうちに、どんどん独り言のようになってくる。
嫌われているとは思えない。
嫌われてはいない。
それだけは確実に言える。
俺はチカの顎を頬を撫でてかわいがりながら、一人悩む。
無理矢理はしたくない。
でもふれたい。
でも、でも、でも…。
考えることも同じことばかり繰り返す。
チカの背中は俺に身を預けるように軽くもたれかかってくる。
俺が考えることの答えはすべてチカが持っているはずなのに、それを答えてはくれない。
嫌なら…、連れとしての区切りをおきたいのなら、それをはっきり口にしてくれればいい。
そうすれば俺も迷わなくてすむ。
言わないから、誘ってみて、嫌がられて、頼んで、かわされるを繰り返す。
別に…ここにいられるだけでもいいけど。
いいけど…。
たまに物足りない。
満たされるけれど、物足りない。
物足りないものはセックスじゃない。
チカの気持ちだ。
惚れられたい。
まだ懲りずに思っているから。
連れには…なれないと思う。
区切られても…従える気がしない。
俺は求めてしまうから。
そこまで考えて、また1に戻る。
求めて、誘って、嫌がられて、頼んで、かわされて。
……チカは俺に何も求めない。
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