Still

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きっと私の好きなんて言葉は酔っていない晃佑にも届かない。 結局、私は晃佑の家でお風呂に入って、晃佑に連れられて昼の繁華街を歩く。 私の住むマンションと晃佑の住むマンションは、そんなに遠くもない。 間にこの繁華街がある感じ。 繁華街が大きいのだけど。 最寄り駅は同じ駅。 待ち合わせ場所だったファッションビルに入って、ウィンドウショッピング。 晃佑は私に派手な色使いの服をあてがう。 私が普段着そうにもないセクシーと思えるような服とか。 「これとこれの組み合わせで。ファッションショーして?絶対似合うから」 晃佑はうれしそうに私を更衣室へ押し込む。 私は晃佑の笑顔に弱いかもしれない。 拒否しないで着てみた。 スカート、かなり短い。 露出多すぎ。 …色っぽい。 似合わないことはないと思うけど恥ずかしい。 「着れた?見せて」 更衣室の外から聞こえた晃佑の声に扉を恐る恐る開ける。 「お。似合う、似合う。エロかわいい。給料残ってたら買ってプレゼントするのに」 「…私、彼女じゃありません」 「もう彼女でいいだろ。2回もセックスしてセフレのつもり?」 「それは晃佑が強引にっ」 「記憶にない。けど、逃げずに縛られていたのはおまえ。 …カード使おう。それ着てデートな。次は靴を見にいこう」 私は晃佑の玩具かもしれない。 …少しは…伝わっていると思っていたい。 私の好きの気持ち。 私の趣味とはまったく違うとも言える服と、ヒールの高い靴。 私は晃佑の好みにされていってる気がする。 拒否をしていないのは…私だけど。 だって…、私を飾って晃佑がうれしそうに笑う。 着なれない、履き慣れない服と靴で私は晃佑に連れ回される。 晃佑は声をかけられて立ち止まり、声をかけてきた女の子たちと話し出す。 また睨まれている。 私は晃佑から少し離れて、近くのベンチに座る。 …好き…だけど。 私と晃佑の在り方は違いすぎる。 彼女になんてなれる気がしない。 晃佑の好きと私の好きはきっと違う。 頭の中、いろんなこと考えるのに。 晃佑のことばかり。 その背中を高校生の私はずっと見ていた。 知らないけど知ってる。 私と晃佑の間には高い壁がある。
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