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「あんまり俺を落ち込ませないでくれ」
「ミク、嫉妬しまくりだったじゃない?彼氏いるし、そういうつもりもないのにコウと話しているだけですっごく睨みつけてきて。見た目ギャルだけど、今の彼女、おとなしいよね。コウってどういう女が好きなの?見た目だけ?どっちもかわいいし」
ミクの話を出されて、俺は目を逸らすように少し下を見て。
ミクとチカの違いを話されて、胸の中にまだ穴があるような気がした。
俺はまだミクを引きずっているのかもしれない。
もう3ヶ月、4ヶ月。
チカとつきあえて、癒されて満たされているはずなのに。
……惚れられたい。
その求める気持ちが俺を本当に満たしてくれない原因かもしれない。
「……チカの見た目は本気で好き」
「見た目だけって最低じゃない?」
見た目だけ…というつもりはないけど。
甘やかしてくれるのがいいとか、その髪に顔を埋めるのが好きとか、なんか違う。
こいつに求められているのは、そういうものじゃないのはわかるから。
俺は…だけど、チカをよく知らない。
わからない。
こういう女だと誰かに言えるほど、チカのことを知らない。
見た目だけかもしれない。
最低かもしれない。
ただ癒されたいだけなのかもしれない。
ただ甘えていたいだけなのかもしれない。
……フラれそうだな、確実に。
「まだつきあったばかりでよく知らないんだって。そう責めないでくれ」
「……嫉妬させちゃおうか?」
「フラれるネタつくってどうすんだよ?」
「嫉妬されると愛されてるって思わない?他の女と仲良くしないでって言われてみたくない?」
にやにやとこいつにとっては冷やかす遊びのように言ってくれる。
嫉妬されたい。
愛されたい。
言われてみたい。
俺の求めることわかっていやがるのがムカつく。
「3人でカラオケでもいこうか?」
「なぁ?おまえ、悪魔だろ?それで別れたらシャレにならない。遠慮する」
「いこうよぉ。いこいこ。…あ、リュウがチカ狙ってる」
俺の腕を掴んでねだって甘えていたと思ったら。
俺は女の言葉に慌ててチカのほうを見る。
隆太にチカを彼女として紹介したことはない。
どこからか漏れ聞こえたのだろう。
おまえは、なんで、チカの肩に腕を回して、親しげに話していやがる?
……俺のほうが嫉妬してる。
………誰かに渡したくないくらい好き。
けど、こう思うのもチカへのただの甘えなのか?
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