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「離せ。隆太に今度こそ言ってやるっ」
俺は女を引き離そうとして、女は俺を止める。
「待った待った。リュウ、悪いやつじゃないって。コウ、騙されやすいし、どんな女か見てるだけでしょ。去年の秋にコウがつきあっていた女、何股ってくらいだったし」
そこを掘り返すなと言いたい。
確かに3ケタ近くつきあえば、中にはそういうのもいた。
貢がせようとするのもいたし、その逆もいた。
……それでも最後は全部同じだ。
俺が何を望み、何を考えてつきあっても。
同じだ。
嘘でも偽りでもなんでもいいから、俺に惚れてる顔をしてみせて欲しい。
望んだままにそういう顔をしてみせてくれていたミクも同じ。
どうせ俺には惚れられるものはなにもないのだろう。
見た目だけで近づいてくるのは、いつも女のほうだと思う。
それでも……俺はチカは違うと信じているのだろう。
根拠はないようなものだけど。
だから……、チカがいいと思って、他の女には興味を持てないのかもしれない。
「騙されやすくて悪かったな。チカはそういう女じゃないとだけは言いきってやる」
「おとなしいもんね。口がうまい女でもなさそうだし。まぁ、ここから見ているだけだと、流されやすそうな子だなと思う。リュウの手、振り払わないし」
「隆太に落とされていたら、俺を引き留めたおまえを恨む」
「暇つぶし。彼女がいても、コウ、つきあってくれるし」
「……殴っていいか?」
「それはいや。カラオケ奢るから」
「飲みまくってやる」
俺は女から離れて、チカと隆太のところにいって。
「チカ」
俺がチカに声をかけると、チカはその顔を俺に向けてくれる。
なんでおまえは隆太の手を振り払わないでいるんだ?と責めたくなりながらも。
「俺の女に気安くさわらない」
俺は隆太に言ってやりながら、そのチカの肩におかれた隆太の手を払う。
「お互い様だろ?嫉妬してやるなら、嫉妬させないでやれば?」
隆太は俺に嫉妬をさせようと、わざとチカの肩を抱いていたらしい。
ムカつく。
そういうおまえに俺の女が何人落とされたか。
そして俺は嫉妬したくないとは言わない。
同じものをチカが返してくれているなら、どこまででも受け入れてやろう。
チカのどこが嫉妬してくれているように見えるのか。
離れて見ているだけ。
嫉妬をくれるのなら、ミクのように相手を睨みつけて、俺を渡さないといった態度でも見せてもらいたい。
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