Difference

6/14

584人が本棚に入れています
本棚に追加
/606ページ
「離せ。隆太に今度こそ言ってやるっ」 俺は女を引き離そうとして、女は俺を止める。 「待った待った。リュウ、悪いやつじゃないって。コウ、騙されやすいし、どんな女か見てるだけでしょ。去年の秋にコウがつきあっていた女、何股ってくらいだったし」 そこを掘り返すなと言いたい。 確かに3ケタ近くつきあえば、中にはそういうのもいた。 貢がせようとするのもいたし、その逆もいた。 ……それでも最後は全部同じだ。 俺が何を望み、何を考えてつきあっても。 同じだ。 嘘でも偽りでもなんでもいいから、俺に惚れてる顔をしてみせて欲しい。 望んだままにそういう顔をしてみせてくれていたミクも同じ。 どうせ俺には惚れられるものはなにもないのだろう。 見た目だけで近づいてくるのは、いつも女のほうだと思う。 それでも……俺はチカは違うと信じているのだろう。 根拠はないようなものだけど。 だから……、チカがいいと思って、他の女には興味を持てないのかもしれない。 「騙されやすくて悪かったな。チカはそういう女じゃないとだけは言いきってやる」 「おとなしいもんね。口がうまい女でもなさそうだし。まぁ、ここから見ているだけだと、流されやすそうな子だなと思う。リュウの手、振り払わないし」 「隆太に落とされていたら、俺を引き留めたおまえを恨む」 「暇つぶし。彼女がいても、コウ、つきあってくれるし」 「……殴っていいか?」 「それはいや。カラオケ奢るから」 「飲みまくってやる」 俺は女から離れて、チカと隆太のところにいって。 「チカ」 俺がチカに声をかけると、チカはその顔を俺に向けてくれる。 なんでおまえは隆太の手を振り払わないでいるんだ?と責めたくなりながらも。 「俺の女に気安くさわらない」 俺は隆太に言ってやりながら、そのチカの肩におかれた隆太の手を払う。 「お互い様だろ?嫉妬してやるなら、嫉妬させないでやれば?」 隆太は俺に嫉妬をさせようと、わざとチカの肩を抱いていたらしい。 ムカつく。 そういうおまえに俺の女が何人落とされたか。 そして俺は嫉妬したくないとは言わない。 同じものをチカが返してくれているなら、どこまででも受け入れてやろう。 チカのどこが嫉妬してくれているように見えるのか。 離れて見ているだけ。 嫉妬をくれるのなら、ミクのように相手を睨みつけて、俺を渡さないといった態度でも見せてもらいたい。
/606ページ

最初のコメントを投稿しよう!

584人が本棚に入れています
本棚に追加