Difference

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「もう一緒に暮らそう?どうせチカも一人暮らしなんだろ?」 俺の家から帰ろうとしていたチカにそう声をかけてみた。 「私の目の前で他の人と長電話しないでくれるのなら考えてもいい」 チカは思いきり不満そうに言ってくれて、俺はかなり痛いことを言われてしまったと思う。 チカを家に呼んでおきながら、俺はかかってきた電話の相手をして、チカを放置しまくってしまった。 「…悪い。もう電話切ったし泊まっていって」 甘えて頼んでみる。 俺もこのまま帰らせたくない。 別に喧嘩をしたくて電話をしていたわけでもない。 …電話の向こう側、トモだったからチカには内容言えないけど。 どちらかというと俺がつきあわされていた。 ふかーく沈みまくった自殺しそうな勢いの電話に。 「夏休み終わったから、私は学校だし晃佑は仕事でしょ?」 チカは当たり前のように、だから帰るのだと言いたげに言ってくれる。 つきあう前は学校があっても泊まってくれていただろと思う。 微妙にムカついた。 チカが体のいい言葉を選ぶから。 つまらないから帰るんだとでも言ってしまいやがれと思う。 「他の女呼ぶぞ」 なんて言ってやると、チカは機嫌を悪くして俺を黙って見る。 俺も何も言わずにチカをじっと見てやる。 「我が儘」 チカはぼそっと言って。 「帰れば?女呼ぶし」 俺は聞こえなかったふりをして、チカから顔を背けて、もう一度言ってやる。 電話していて寂しかった。かまって…なんてチカが言ってくれたなら喜ぶのに。 そう思うこともないほど冷めてるのか、キレたのか。 反省はしてやった。謝罪もした。 俺から求めてもやった。 体のいい言葉で俺の望んだことをかわすなと言いたい。 チカは足音を響かせて俺に近づいてきたかと思うと、いきなりヘッドロックを喰らった。 その腕は本気で俺の首を絞めてくれそうだ。 「ちょっ、絞まるっ。死ぬってっ」 俺はチカの腕から逃れようともがく。 本気でキレたようだ。 こんなチカは初めてだと思う。 そして女に本気で首を絞められそうになったのも初めてだ。 いや、まだ絞められている。 殺されそうな勢いで。 俺が我が儘のように、チカを引き留めるためだけに言った、女を呼ぶというのが怒らせた原因だろう。
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