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「別れたいなら別れたいって言ってもいいけど、晃佑がそんなのだったら、一生、誰とつきあっても同じだよっ?私を好きになれないなら、なれないでいい。ちゃんと好きになれる人とつきあえばっ?誰でもいいなら恋愛しなくていいじゃないっ」
なんてことを言いながら、チカは俺の首を更に締め上げてくれる。
本気、苦しくて、チカが言いたいことを考える余裕なんてなくて。
「死ぬっ。ちょっと落ち着けっ。俺はだから、おまえと一緒に寝たいって、それだけっ」
「だったら脅すな、馬鹿っ。我が儘っ。ずっと私を放置で電話の相手の女の子と話していたくせにっ」
「それ謝っただろっ。とにかく離せっ。落ち着けっ」
大声で喚いたら、チカは俺の首からやっと腕を離してくれて、俺はゲホゲホと咳き込みながら、絞められた首をさする。
本気、死ぬかと思った…。
誰も別れたいなんて言ってない。
おまえを好きになれないとも言ってない。
誰でもいいなんて思ってない。
それでもチカは俺の態度を見て、そう思うらしい。
俺は呼吸が落ち着くと、部屋の中に座って俯いてむくれているチカの頬に手を当てる。
チカは俯いたままで。
その頬を軽く摘まみながら、俺はチカの唇に下からキスをした。
軽くキスして離して、その顔を見ると、まだ不満そうに俺を見ている。
お互いに不満だらけなんだよなと言ってやりたくなる。
おまえも我慢して俺につきあってくれなくてもいいとでも言ってやったほうがいいのだろうか?
他の女のように、さっさと俺を捨てて、楽しい恋愛ができる相手を見つければいいと言ってしまえばいいのだろうか?
俺はいつも求めてるだろ?
おまえは俺に何を望んでいる?
おまえと別れて?
好きになれる女と恋愛しろ?
誰もそんな言葉を望んでいない。
おまえはどうしたい?
……喧嘩になりそうで言えずに、すべてを俺の中に引っ込めて。
「ごめんな」
もう一度謝った。
チカはむくれたまま、何も言わずに頷いた。
その手を握って、指を絡めてぎゅっと握って。
握り返してと望むように握っても、チカは握り返してもくれない。
俺はおまえに求められたい。
ただ、それだけ。
それが今はなんだか最高の我が儘のようだ。
俺は…俺が思う以上に、きっとチカを愛してる。
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