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「チカ、いくぞ」
なんて声をかけられて、いきなり私は腕を引っ張られた。
「どこに?」
「飯。昼飯まだだろ?」
私はとりあえず立ち上がって、晃佑に引っ張られるまま、晃佑とずっと話していた女の子たちのところに連れて行かれる。
そのまま、私を睨むだけの女の子たちと一緒に歩き出す。
もちろん嫌だ。
二人だけならいい。
嫉妬してくれる女の子と一緒には行きたくない。
「帰るっ」
私は立ち止まって晃佑に声をかける。
「なんで?人見知り?仲良くしてやれよ。俺の彼女なんだし」
彼女になったつもりなんかないっ。
「そうそう。仲良くしてよ。誰も虐めたりしないってば」
ねーと女の子たちは笑いあう。
晃佑が私を見て、女の子たちから目を逸らすと、女の子たちは私を不機嫌に見てくれる。
私は迷って。
言葉に本当にすごく迷って。
「…服、返すからちょっと待ってて」
そう言った。
私は晃佑の世界に入っていきたくない。
…嘘。
近づきたいけど、近づけない。
私からは近づけない。
「はぁっ?それはチカに買ってやったんだろうがっ」
「私の趣味じゃない。返すっ」
トイレで着替えようとしたら、晃佑は私の腕を強く握って引き留めた。
「いらねぇよ。いきなりなんなんだ?さっきまでおとなしくついてきていたくせに」
どこか責められるような言葉に、私は耳を塞いでしまいたくなる。
もういい…。
私を嫌って。
もう電話もしないで。
「あたしたちと仲良くしたくないってさ。コウ、その子、コウが酔ってる時にナンパした子でしょ?その子に誘われてたし、そのままいなくなったし。えっちしたから気にかけてる?」
女の子は晃佑の腕にふれながら言って。
誘ったつもりなんかないけど、あの時、晃佑も誘われたかと思ったって言ってたから…。
「…俺、誘われたの?」
「そう見えたけど?」
晃佑は女の子の返事を聞くと私を見た。
私は視線をあげて晃佑を見上げる。
「……だから、全部私が晃佑を嵌めただけ。晃佑とやるためだけに。貢いでくるからこわくなった。もう…電話しないで」
私はそんな嘘を晃佑にあげた。
「嘘つき」
晃佑は即否定してくれる。
そういうことにしておいてくれていいと言ってあげているのに。
「次、嘘ついたらおまえは俺の女決定」
私を引き留める意味が私にはわからない。
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