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喧嘩をするのがいつものことかもしれない。
すぐ仲直りするけど。
喧嘩の要因はいつも俺かもしれない。
不満を与えて、その意識が俺だけに向いていることに満たされるのかもしれない。
けど、でも、いつも喧嘩をしていたいなんて思うわけじゃない。
俺がチカに甘えるから喧嘩になるのはわかってるけど。
どうすればチカが俺を愛してくれるのか試行錯誤して、その結果の空回り。
こんな悩む恋愛なんて初めてさせられている。
悩めば悩むほど、チカのことばかり考えている俺がいる。
なぁ?チカ。
おまえも俺を軽く見ていないか?
そう気がついてきた2ヶ月目。
「コウ、お願い。今度こそやめるから。一緒にいて」
チカがバイトでいない時間、いつものようにいつもの場所に遊びにいくと、トモにそんなふうに甘えられる。
「おまえ、それ何度目?いい加減キレるぞ?本当にやめるなら、売人とのつきあいやめろって前にも言っただろ?俺はクスリやってラリってるのと連れはしていたくない」
俺が今度こそはっきりと切り捨ててやるみたいに言ってやると、トモは本気で凹んでくれた。
反省はするけど、クスリは依存性がある。
本当にまわりは誰も知らない、手に入らない状態にしないと、常習していたやつらはやめられないらしい。
ラリっていないなら、まぁ普通に話せるし、悪いやつじゃなかったりもするけど。
俺がクスリだの犯罪だのは絶対に反対して、そのクスリを俺に売ろうものなら、何万の金が稼げるものだろうが取り上げてトイレに流すから、クスリやってるやつらも、そっちに俺を引っ張ろうとはしなくなった。
わかってはいる。
クスリをやるやつは、その高揚感に逃げている弱い人間だってことは。
俺も弱い人間だから、その欲望に引っ張られることはわかる。
つらいことから逃げて、なにも考えずに常に楽しい気分でいたいのはわかる。
わかるが、逃げ続けても何もない。
「今持ってるの出してみな?家においてるのもあれば出してみな?話はそれからだ」
トモは俺の前に小さなピルケースのようなものをおとなしく出してきて、俺はそのケースを開けようとして。
トモの手が俺の手を止めるように、そのピルケースを手元に戻そうとする。
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